ハロウィーン 2
に頼まれたから、仕方なく四階の禁じられた廊下に足を踏み入れた。
ハーマイオニーにトロールのことを知らせるっていう選択肢もあったけれど、それは遠慮したい。
生意気なグリフィンドール生に興味なんてない。関わりたくもない。
だから、危険かもしれないけれど、四階の禁じられた廊下に来た。
「…寮に戻ったはずではなかったのかね?」
「…なんとなく、教授がこちらに来るのが見えましたので」
「……………」
四階の廊下でであったのは、足を引きずるスネイプ教授。
何かの動物に噛まれたような傷ができていた。…早く手当てしないと化膿する。
「…とりあえず寮に戻りたまえ。トロールが……」
「教授、トロールは地下室に侵入してきたんですよね?」
「……」
「…なぜ、進入してきただけで四階の禁じられた廊下に?僕にはそれがよくわかりませんが」
「知る必要はない」
「…そうですか」
教授は黒いマントを翻して、ふんっと鼻を鳴らした。
「早く寮に戻りたまえ」
「はい。教授が何を確かめようとしてこの廊下に足を踏み入れたのかは知りませんが、その足の傷、早く手当てしないと化膿してしまうと思います」
うっ、と言葉に詰まる教授に笑顔を向けて、僕はその場を後にした。
四階の禁じられた廊下に何か大きな動物が居ることは、教授の足の傷と、教授の後ろの暗いところから聞こえてきた唸り声でわかった。
何がいるかなんて、詮索するようなおろかなことはしないけれど、地下室にトロールが進入してきたのに、教授が四階に向かったのには何かわけがありそうだ。
……トロールは頭のいい魔物じゃない。
だから、トロールを侵入させたやつが、トロールをおとりに使ったことは明白だ。
じゃあ、いったい誰がトロールを侵入させた?
疑問がわいた。
後で、に話そうと思った。
女子用トイレの方に向かって歩いていったら、ハリーとロンの姿が見えた。
おおかた、ハーマイオニーにトロールのことを知らせに言ったんだろう。
…それにしては中から大きな悲鳴。
彼らはあせっている。
……何をした?
トロール特有の強烈な鼻を突くにおいが充満していた。
「…ハリーたち、トロールと一緒にハーマイオニーまで女子用トイレに閉じ込めちゃったみたいだねぇ…」
…そんな、、笑顔で言ってる場合じゃないと思うぞ。
は笑顔で、ゆっくり歩いて、女子用トイレに向かった。
走らなくていいのだろうか、彼らを助けなくていいのだろうか、と思ったが、に何か考えがあるのだろうと思った。
「彼らが仲良くなるいい機会かな?」
なんて、不思議なことをつぶやきながら歩いている。
「散りゆく可憐な花は空想だよ。…未来は変えることができるものね。まさか、ハリーたちがハーマイオニーのほうにいくとは思わなかった」
つぶやきながら、トイレにたどり着いた。
鼻を突く強烈なにおい。
耳を劈くような大きな唸り声。
トロール特有の声。
俺たちが女子用トイレにたどり着いたとき、ハーマイオニーはまだ無事で、だけど腰が抜けてしまったのか壁に張り付いて動けなさそうだった。
その横で、ハリーとロンが懸命にトロールと戦っていたが、あまりいい戦い方とはいえなかった。
ハリーは杖をトロールの鼻に突き刺して、必死にトロールにしがみついていたけれど、振り落とされるのは時間の問題だった。
ロンはしばらくの間、その状況を見ていることしかできなかった。
おい、。ここは助けたほうがいいんじゃないか?
トロールは背が高いから、あそこから落とされたらハリーが危ないぞ?
も気がついたらしく、杖を取り出して呪文を唱えた。
その呪文はハリーの体に当たってハリーをふわふわと地面の上に立たせた。
それからもうひとつ呪文を唱えて、トロールの動きを止めたらしい。
「…これくらいでいいでしょ?」
と、俺に言っていた。どうやらあまり魔法を使いたくないらしい。
トロールの体の動きが止まった後に、ロンの魔法が(珍しく成功した)トロールにかかり、動かないトロールの頭に棍棒を墜落させた。
トロールはふらふらしたかと思うと、ドサッと音を立ててその場にうつぶせに伸びてしまった。
部屋がぶるぶると震えて、俺とかとかはその震えにあわせてぐらぐら体が揺れていた。
「…これ、死んだの?」
やっと壁に張り付いていたハーマイオニーが口をきいた。
「…いや、ノックアウトされただけだと思う」
ハリーがそういった。
ハリーはトロールの鼻くそがついた自分の杖を、トロールのズボンでふき取ったのだが、ふき取りきれなかったらしい。トロールのズボンの生地が硬すぎて。
するとハリーはこともあろうに、ふき取れなかったトロールの鼻くそをロンのローブでふき取った。
…幸か不幸か、ロンは気づいていなかった……気づけよ…
それから三人は俺たちのほうに向き直った。
「…えっと…が僕たちを助けてくれたの?」
「ん?僕何もしてないよ」
「嘘よ、だって、ハリーの体がゆっくり地面に降りてきたとき、魔法の光に包まれてたわ。それにトロールだってロンの魔法が効く直前に硬直してたわよ」
…饒舌だなぁ、ハーマイオニー……
そのとき、急にばたんと音がしてばたばたと三人の教師が女子用トイレに入って来た。
マクゴガナル教授と、スネイプ教授、それに、大広間で気を失っていたはずのクィレル教授だった。
「…一体全体、あなた方はどういうつもりなんですか」
怒りに満ちた冷静な声。
ハリーたちの中にあった、トロールを倒したという興奮と、うれしさは一気に吹っ飛んでしまって、あたりは冷たくなった。
「殺されなかったのは運がよかった。寮に居るべきあなた方がどうしてここに居るんですか?」
ハリーはうつむいていたし、ロンは杖を片付けることもせずに三人の教師を見つめていた。
そんな時、俺たちの後ろから声がした。
「…マクゴガナル先生、聞いてください………みんな、私を探しに来たんです」
立ち上がったハーマイオニーが何を言おうとしたのか俺には想像がつかなかったけれど、ハリーたちをかばおうとしたんだなって思った。
はもう少し深く理解していたみたいで、ハーマイオニーの言葉をさえぎった。
「…教授、ハーマイオニーが夕食の時間に大広間に居なかったことをご存知でしたか?」
三人の教授はそろって首を横に振った。
「大広間にクィレル教授がトロールが侵入したと知らせたとき、ハーマイオニーは席をはずしていました。それに気がついたのでトロールのことを知らせるために彼女を探しました」
…ハーマイオニーの顔が驚きで満ちていた。
ほかの二人もを見つめていた。
は三人に軽くウィンクして、話を続けた。
「…トロールの事を知らせたまではよかったのですが、そのときちょうどトロールがこちらに入り込んできてしまったのです。だから…杖を取り出して戦うしかなかったんです」
俺にも軽くウィンクしてくれた。
「…まあ、そういうことでしたら…」
マクゴガナル教授は俺たちをじっと見た。
「あなたたちは運がよかった。でも大人の野生とロールと対決できる一年生はそうざらにはいません。…一人五点ずつ差し上げましょう」
ダンブルドア先生にご報告しておきます、と、マクゴガナル教授は言ったが、その後、俺とを見た。
「グリフィンドール寮のあなた方は帰ってよろしい。…ミスター。あなたは私とともにダンブルドア先生のところに行きます、いらっしゃい」
呆然と立ち尽くす三人に、は軽く手を振って笑顔でマクゴガナル教授についていった。
「…血は争えんのぉ…」
苦笑していた。
「ネビル・ロングボトムが箒から振り落とされたときも君が助けたのだと、マダム・フーチが後でわしに報告しに来たよ」
長いひげの老人は、どうやら校長先生だったらしくて、俺たちは校長室のふかふかしたソファーに座っていた。
「………」
「そう思いつめなくてもよい。君の魔法のおかげでロングボトム君は手首の骨折という軽症ですんだのじゃからの」
それにしても……と、老人はうなっていた。
「…先生…僕は……」
「ああ、心配することはない。君は正しいことをしたまでじゃ」
「…いえ、あの……」
「…そのことも、心配せんでいい。ホグワーツは安全じゃよ。ここで生活していれば何もない」
は困ったような笑顔で老人を見つめて、それからペコリ、と頭を下げた。
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ハリーたちの出番が…(爆)これからもう少し親密になっていくかな?(笑)
賢者の石の原作沿いが終わったら、主人公設定をアップしようと思ってます。
賢者の石の話で、設定を明かすつもりなんで(笑)