クィディッチ


 ハリーの初出場となるクディッチの試合の日。
 僕はいつもより早くに目覚めた。
 夢を見たわけじゃないから、今日の試合のことを心配するわけじゃなかったけど…
 でも、なんとなく気にかかったから母上にもらった水晶玉を取り出した。
 初めのころはなかなか僕の魔力に反応してくれなかった水晶玉も、今はもう僕が見たいものをすぐに映し出してくれるようになった。
 ……確実に、僕の魔力が上がってきている……

 「……これは……」

 …見てはいけないものを見た気がして、僕はうつむいた。
 今尚、水晶玉は映していた。
 今日の未来を。
 水晶玉に映されたのはハリーやクディッチの選手たちではなく、あの人。
 僕が授業に行くといつも、僕を親しげな瞳で、時に敬うような瞳で見るあの人。

 ……紫色のターバンを巻いた教師、クィレル。

 暗い闇に落ちている彼の姿。そして彼の手から零れ落ちたのは真っ赤な薔薇の花びら。

 「…仕方ない。観客席で普通に試合を見るわけにはいかないな」






 俺が目覚めたとき、いつもは俺と同じくらいの時間に目覚めるが、今日は珍しく早く起きていた。
 でも、考え事をしているようで俺が起きたことにも、足に擦り寄ったことにも気がついていないようだった。

 「……………………………」

 上を向いて、時に水晶玉を見て、それから大きなため息をつく。
 …朝からそんなため息をついていたら幸せが逃げるぞ?

 「…あ、。起きたんだね。ごめん、気がつかなくて」

 わさわさと俺の体をなでると、愛用のブラシを持ってきて俺の毛を梳かしてくれた。
 でも、手を動かすだけで心はどこか別の場所。
 には何か心配していることがあるのだろうか……

 「…ねえ、。今日のクディッチの試合のときに…お願いがあるんだ」

 そっと、俺の耳元でささやいた。
 俺は理解したから、返事をする代わりに、の頬を舐めた。
 はくすぐったそうにしてからベッドを片付け、朝食へ行く準備を始めた。
 のっそりと、どうも低血圧らしいも起き上がった。

 「………」
 「…、寝癖すごい…」
 「………」













 …さて、俺とは上空にいた。
 ちょうどクディッチの試合が始まった時間だ。
 は興味がない、といっていたけれど、マルフォイに誘われたから、といって観客席で試合を見物していた。
 も誘ってくれたけど、はそれを丁寧に断った。

 それで、上空にいた。
 上空って言っても、クディッチ競技場の上空じゃない。
 観客席の上空。それも、ハーマイオニーやロンが座っているところの向かい側。
 ……教師が何人も座っている。

 「…スネイプ教授は見るからに怪しい格好をしてるよなぁ……」

 俺の背中にまたがって、はのほほんとしていた。
 とりあえず、空を翔る紅獅子である俺がいるから、は箒を必要としないわけなんだけど……
 俺にはの考えていることがわからなかった。

 「…そろそろかな……」

 上空にいるので試合の様子はよくわからない。
 紅い点と緑の点がうようよ動いているくらいにしか見えないほど上空にいるんだけど……
 は水晶玉でクディッチの様子を見ているから関係ないのか。

 「、少し降下してくれる?」

 言われるままに少し降下したら、試合の流れがよく見えるようになった。
 ……ハリー!!箒から振り落とされそうになってるぞ?!

 「…闇の力を感じるんだ、。ほら、誰かが魔法をかけてる……僕の予想が正しければそれは……」

 そんなに悠長に説明しなくていいから、ハリーを助けてやれよ……
 ニコニコ顔では説明してくれたけど、その間にもどんどんハリーが振り落とされそうになってて……見ちゃいられない。

 「あんまり魔法を使いたくないんだ。…スネイプ教授に気づかれそうで……」

 そういってからは紫色のターバンめがけて杖を振った。
 …普段ならは光を出して魔法を飛ばして相手を助けたり倒したりするんだけど…
 今日はこの何ヶ月かのクィレルの授業の下手さにむかついていたらしくて、かなり大きい石が、何個もクィレルめがけて降っていった。
 ……こんな上空から落としたら、それこそ重力が働いて加速してすごく痛いぞ?
 あ、あいつターバン巻いているからいいのか……

 「……ハーマイオニーが何かしてる」

 自分の魔法で出した石の行方と、クディッチの試合の行方を水晶玉で見ていたがつぶやいた。
 俺もよくよく目を凝らしてみてみたら、観客席でハリーを応援していたはずのハーマイオニーがいなかった。

 「…なっ………」

 の声が震えていた。
 …どうかしたか?
 とりあえず、クィレルのほうの観客席に視線を戻すと、大騒ぎになっていた。
 黒ずくめのスネイプ教授のマントがこげていた。
 穴が開いてる。
 観客席は大騒ぎで、教授は驚いて火を消していた。
 …クィレルは、やっぱり驚いて火を消すのを手伝っていたんだけど、そのときに思いっきりの降らせた石が頭に当たったものだからたまったもんじゃない。
 すごいゆがんだ顔をして、その顔もまた観客席を大騒ぎにさせた。

 「……ハーマイオニーがねぇ…さすが頭のいい女の子だ」

 くすくすとが笑っていた。

 「…でもまさか、スネイプ教授のマントを燃やすとは……」

 上空で、声が聞こえないのをいいことには大声で笑った。
 涙目になっている。

 「……面白いね、。さすがホグワーツ。いろんな生徒がいるよ」

 しばらく笑っていたは、笑いをこらえながら俺に降下するよう求めた。
 ゆっくり、人気のないところへ降りると、が俺の背から地上に降りた。

 「…う〜ん…あんな高いところまで行ったのは久しぶりだった……」

 まだ地上になれないの足はを上手に支えられなくて少しふらふらしていた。

 「とりあえず、観客席に行こうか」

 そういって歩き出して、スリザリンの観客席に紛れ込んだ。隣にはちょうどがいた。
 みんなが立って応援している中、は興味がなさそうに座っていた。

 競技場では、ハリーが大声で叫んでいた。

 「スニッチを取ったぞ!!」

 試合はグリフィンドールの勝利で終わった。

 「…やっぱり、グリフィンドールの勝ちか」

 そうつぶやいたのはで。

 「最年少シーカー、ハリー・ポッターがいるからねぇ…」

 が何気なくそう答えたらは心底驚いた表情で俺とを見た。

 「…いつからそこに?確か見に来ないんじゃぁ……」
 「え?ちゃんとここにいたよ?」
 「…………?」
 「やだなぁ、。僕の存在を忘れてたなんて……」

 にっこりと、満面の黒い笑みを見せたに、はおびえていた。

 「…僕の聞き間違いだったんだな」
 「うん」
 「…まあいい。試合も終わったことだしそろそろ戻ろうか」
 「そうしようか」

 …って時々すごいと思う……





 外ではまだ、大騒ぎだったけれど、俺たちは寮の部屋でティータイムを楽しんでいた。
 俺は、ニトと遊んでいた。
 小さいけれど、なかなかすばしっこいニトはいまや俺の一番の遊び相手になっていた。

 あ、そうそう。
 が嫌がるからは内緒にしていたんだけれども、ティータイムの後すぐに、ハーマイオニーからに宛てて手紙が来ていた。






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 クディッチでした!(爆)
 最後のほうの、黒いなぁ……(爆)
 クリスマスにひとつネタを考えているのですが、なかなかクリスマスまで進まない……(汗)