首輪


 ヴォルが連れてきた猫は、誰のペットでもなくて、結局私が飼うことになった。

 で、今はその猫と格闘中。
 新学期が始まったとき、私の育ての親が私に持たせたのはほんの少しのお菓子だった。
 …そんなもの私には必要がなかったし、マグルのお菓子だといえば、みんなほしがるので、あげてしまった。
 そうしたら、そのお返しに…と、ある女生徒(名前は忘れてしまったけれど)がくれた水色のかわいいリボン。
 魔法使いが使うリボンだから、なかなかよいもので、長さも自由に変えられる。

 だから、このリボンを真っ白い猫の首につけようと思ったの。
 毛が真っ白だから、水色のリボンって映えると思うの。

 「…何で、嫌がるの?!」

 でも、首につけようとしたら、引っかかれた。

 「、痛いじゃない。ほら、こっちおいで」

 リボンを見せずに呼べば必ず私のところに来て、私のひざに座る賢い猫なんだけど……
 リボンをつけられるのはいやらしい。

 「どうしたの?」

 向かい側で勉強をしていたヴォルが顔を上げて私を見た。
 私たちは宿題を終えて、勉強といいながら闇の魔術の勉強を隠し部屋でしているのだ。

 「…が…引っかいたのよ」
 「それにしちゃ、君のひざの上でくつろいでいるみたいだけど」
 「そうなのよね……あ、血が出てきたわ」

 なんとなく引っかかれた傷口を見ながらの背をなでた。

 「これ、の首につけようとすると怒って逃げちゃうの。ヴォル、つけてくれるかしら?」
 「君がつけられないなら、君よりもになつかれていない僕がつけられると思う?」
 「思わないけれど、とりあえず言ってみただけよ」

 くすって彼が笑った気がした。
 それから、手を止めて私とのほうにやってきた。
 を抱き上げるとじっと見つめて言う。

 「君にそっくりじゃないか」

 って。
 私にそっくり?が?何で?

 「何で?」

 疑問だった。こんなに真っ白い猫が私にそっくりなんて。
 私は闇だ。ヴォルもそれを承知している。
 私がそっくりなのは…白い猫ではなく、黒い猫…。

 「だって、首輪に縛り付けられて、拘束されるのがいやなんだろう?は」

 ……
 ……なるほどね。
 そういうことですか。

 「君だって、僕やほかの人に拘束されるのは嫌いじゃないか。外では優等生ぶっているけれど……」
 「だって、自由のない生き方なんていやですもの。自分のしたいことができる、自分の行きたいところにいける…そういう人生がいいわ」
 「僕が闇の帝王になったらすぐに叶うよ」
 「……期待してるわ」

 それから手にしていたリボンを見て、にそれをつけるのをあきらめた。

 「そう、じゃあはそのままがいいのね?」

 な〜ぅ

 が返事をするかのように鳴いた。
 リボンはそのまま私のローブのポケットにしまった。

 「…ほんと、わがままな猫ね」

 呆れたように微笑んで、をみたら、引っかかれた傷をなめられた。
 ヒヤッとして、痛かった。

 「傷口、大きいね」
 「…そうね」

 治療するわけでもなく、なんとなく血が出るのを見ていた。

 「自由になりたいわ」

 微笑んでいった。

 「もう少しだ」
 「でも、ずっと私がヴォルと一緒にいるかどうかなんてわからないのよ?」

 おどけていってみた。

 「…大丈夫、君はずっと僕と一緒にいるさ」
 「あら、私は自由な女だからわからないわ」
 「ずっと一緒さ。だって、そうじゃないと君の自由がなくなるもの」

 いたずらっぽく笑ってた。

 「そう?…まあ、今はまだ離れる気はないけどね。本音で話せる人なんてあなたしかいないもの」

 二人で一緒に笑って…
 ヴォルが闇の魔術の研究を始めたから、私もそれを横で見せてもらうことにした。

 そうね…
 今はまだ…あなたと一緒にいたい
 そのうち私の気が変わるかもしれないけれど…
 今はまだ…
 一緒にいたい……






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 時々いますよね、首輪つけられるのが嫌いな猫(笑)
 それは、拘束されるのがいやだからじゃないかって…ふと考えました。
 まあ、猫にしてみれば邪魔なだけなんでしょうけど……(笑)