ハロウィーン


 もうすぐハロウィーンだ。
 去年のことを考えると素直に喜べないような気がしたけれど、それでもあの大量のご馳走は楽しみだった。
 もハロウィンが近づくにつれて笑顔になっているのだ。
 も、どれだけ勉強ができたって子どもには変わりないから、パーティーが楽しみのようだった。

 「今年は、楽しいことがあるといいね」
 「去年は楽しいとは言いがたかったからな」
 「まぁ、結局あの事件は解決したからいいじゃないか」
 「……僕は、がまた何かとんでもないことをするんじゃないかと心配になってきたよ」
 「やだなぁ、。僕そんなに考えなしに行動したりしないよ?」
 「…そういいながら、去年は結構大胆な行動をしてくれたからね」
 「あはは……楽しかったよ。今度はもいかが?」
 「…次が無いことを祈ってる……と、ちょうど夏休み前に君に言った気がするよ」
 「そういえば、聞いた気がするよ」

 からからと、綺麗に混ざった笑い声が聞こえる。
 の声も、の声も透き通っていて綺麗だ。
 ぴくぴくと耳を動かしながら、俺はその綺麗に調和した音を耳にしながら二人の横を歩いている。
 もう今日は授業も無く、これからのんびりとした時間なのだ。
 たちは談話室がハロウィンの話しで盛り上がっているところを抜けて、図書室へと向かうところだった。
 なぜだかニトも俺の背中に乗ってついてきている。
 もう慣れたから何も言わないが。


 そんなこんなで、図書室に行くために廊下を歩いていたら、グリフィンドールの幽霊、サー・ニコラスに出会った。
 サー・ニコラスは他寮の生徒だからといって、俺たちを毛嫌いしていない、とても紳士的な幽霊だ。
 俺もも、彼に好感を抱いている。
 恐らくも、彼自体をそんなに嫌ってはいないようだ。

 「こんにちは、サー・ニコラス。気分はいかが?」
 「これはこれは、殿に殿」
 「今日は、いつもより一段と顔色が優れないようだけれども、何かよいことでもあったんですか?」

 幽霊たちには、俺たち生きているものの常識は当てはまらない。
 顔色が悪いっていうのは、彼らにとってほめ言葉以外の何者でもないのだ。
 だから、は顔色が悪いといってサー・ニコラスを褒める。
 幽霊相手にも社交辞令を使うあたり、らしい。

 「ああ、顔にまで表れていますかね。実は今度のハロウィンが私の五百回目の絶命日に当たるんですよ」
 「五百回目…ですか」

 喜んでいいのか、悲しむべきなのか……俺には分からなくて、のどを低く鳴らした。
 の手が俺の首筋をなでた。
 くすぐったかったけれど、どうやらも同じことを考えているようだった。

 「私は広めの地下牢を一つ使って、パーティーを開こうと計画しているのですよ。国中から知人が集まります。あなた方が出席してくださればどんなに光栄か……ああ、でも恐らく学校のパーティーの方に行きたいと思われるでしょうね」

 は顔を見合わせた。
 俺は大きなあくびをしての足元に擦り寄った。

 「…絶命日パーティーですか?」
 「ええ」
 「どう思う?
 「サー・ニコラスの知人…それは皆幽霊だと…?」
 「ええ、もちろんです。国中から集まりますよ」
 「なんだか面白そうだね」
 「広くて不気味な地下牢にたくさんの幽霊たち。恐らく死んだ年代もすべて異なっているんだろうなぁ」
 「……興味あるね」
 「まったくだ」
 「学校のパーティーと天秤にかけたらどっちに傾く?」
 「そりゃもちろん………」

 一瞬の静寂。
 そして……

 「「喜んで出席させていただきます」」

 二人の声が重なった。
 同調した声は、本当に澄んでいて、それでいて無邪気な声だ。
 綺麗な音を耳にするのは好きだ。
 背中の上のニトも気持ちよさそうにしている。
 まったく、はすごいと思う。
 そろって同時に軽く会釈し、そして同時に顔を上げた二人。
 どこかの双子とまったく同じくらいに息が合っている。
 サー・ニコラスも満足げに会釈を返した。

 「それでは、詳しいことが決まりましたら、またご連絡いたします」

 サー・ニコラスは笑みを浮かべて二人の間をすっと通り過ぎていった。











 図書室の角の机。
 俺はのひざの上に乗っている。
 ニトはが抱いていて、二人は笑顔で絶命日パーティーについて話をしている。

 「ホグワーツは本当にすごいところだね。死んでから五百年か。僕らのずーっと前からサー・ニコラスはホグワーツにいるんだね」
 「それにしては現代的で紳士的な人だけどな」
 「…そうだね。血みどろ男爵はどちらかというと堅物だね」
 「だけれど、彼は根は優しいだろう?」
 「ああ。人も幽霊も見かけにはよらないってことだね」

 くすくすと二人の笑い声が響く。

 「ねぇ、。今年はハロウィーンに何も起こらないといいな」

 が優しい目で俺を見た。
 の頬をそっとなめてやったら、くすぐったそうに笑ってた。
 今年はあっという間に過ぎていく。
 あと少しでハロウィーン。
 パンプキンパイの焼けるにおいが懐かしい。






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 とりあえず絶命日パーティーへのお誘いということで。
 また、いろいろありそうだけれども。
 やっぱりも子どもだから、無邪気なんです!(笑)