魔法薬学
教授の大演説は思ったよりも長くて、魔法なんて俺には関係ないからうとうとしていたんだけど……
それも、教授の「ポッター!」と勢いよく叫んだ言葉にびっくりしてさめてしまった。
目がパッチリしてる。
「アスフォデルの球根の粉末にニガヨモギを煎じたものを加えると何になるか」
『生ける屍の水薬』だったか……
がよく話して聞かせてくれたやつだな。
暇になると教科書を読んでいるは、このクスリが作ってみたいなぁ…、といっていた。
何度も言うものだから、俺でさえも覚えてしまったやつだ。
教室では、ハリーが降参だ、という顔をしていて、後ろの席の栗色のふさふさした髪の女の子が腕を高く上げていた。
……君はポッターか?
それから俺の上で羊皮紙に何かメモを取る音と、ささやき声が聞こえた。
「『生ける屍の水薬』でしょう?」
「ああ。教科書に載っていたよな」
「うん。どれくらい強力なのか試してみたいと思わない?」
「確かに。書物に書かれているだけじゃよくわからないからな」
……普通の学生の会話じゃない気がするよ……
がスリザリン寮になったのがよくわかる会話だった。
「わからないのか?ではもうひとつ聞こう。ベゾアール石を見つけてこいといわれたら、どこを探すかね?」
スリザリン席で数人の生徒の笑い声が聞こえた。
胸くそ悪い。
他人の失敗を笑うやつらは最低なやつだ。……そう思ってる。
だから、スリザリン寮のやつらが本気でにくかった。
大体、マグルと生活しているハリーがそんなことをしらないのは当然のことじゃないか…って思った。
…というよりも、とが並外れた学習能力の持ち主なだけな気がするのだ。
ほかの生徒だって(手を上げているふさふさな髪の女の子を除いて)ほとんどが教師が何を言っているのかすらわかっていない表情だった。
「あれって山羊の胃の中にある解毒剤だったよな?」
「うん、そう。妙に詳しく教科書に解説してあった気がする」
「そうそう。あんなに詳しく取り出すところを載せなくてもいい気がしたけれど」
ささやき声…にしては、との会話は声が大きかった気がする。
ほら、ささやき声を聞きつけて、教師がこっちにやってきちゃったじゃないか。
「…何をしているのかね、二人とも」
「?先生が言ったことをメモしているのですが?」
「……ほぉ……では、先ほどの問いの答えを知っているかね?・。 随分と大きな声で会話をしていたようだが」
…いやみなやつだな…
「えっと、最初の問いの答えは強力な眠り薬、通称『生ける屍の水薬』になります」
「よろしい。では、・。次の問いの答えは?」
「…ベゾアール石は、山羊の胃の中にあります。大抵の薬に対する解毒剤になるはずです」
「よろしい」
教師の顔が妙に緩んだような気がしたが、それは気持ちだけだったかもしれない。
教師は振り向くと、教壇に登り、大きな声で言った。
「こうやってちゃんと質問に答えられる生徒がいるのに、なぜ君は授業の前に教科書を開いてみようと思わなかったんだね?ポッター。諸君、なぜ今のを全部ノートに書き取らんのだ?」
がさごそ、と、羊皮紙と羽ペンを取り出す音が聞こえた。
……すごくうるさい。
がさがさする音は耳障りだ。
「・、・の勤勉さに、スリザリンに2点加点。ポッター、君の無礼な態度でグリフィンドールは1点減点」
に加点されたのはうれしいけれど、ハリーが減点されたのはものすごくいやだった。
本来なら減点されるようなことではないはずだ。
って…思ったんだけど…、にとってはさっきのことは当然だったのかなぁとか考えてしまう俺がいた。
それから、ネビルとかいう、ヒキガエル探しの男の子が釜をひっくり返すまでは順調だった。
クラスの雰囲気はあまりよいとはいえなかったけれど、俺にもにも被害はなかったし、授業中、とと、マルフォイだけが注意を受けずにすんだ。
…お気に入り…??
でも、ネビルが釜をひっくり返してから、また怒りの矛先がハリーたちに向いたのには驚いた。
あれは、ハリーたちのせいではなくネビルの不注意のせいなはずなのだが、教授はそんなことお構いなしだ。
なんくせつけて、グリフィンドールからまた一点減点した。
授業はそれから約一時間続いて、やっと終了した。
片付けも終わったは俺とをつれて教室を後にしたが、すぐにハリーとロンに呼び止められた。
「!」
…の顔がすごく曇ってるよ。根っからのスリザリンだな、こいつ。
スリザリン生以外と話したくないって言う……
もそのことを察したのか、に言った。
「、先に寮に戻っててよ。僕もすぐに行くからさ」
しぶしぶはうなずいて、マルフォイたちの軍団に加わって寮に戻っていった。
「、すごいね。よくあの質問に答えられたと思うよ。よっぽど勉強して、教科書暗記したんでしょ?」
「え?……ああ、あれはたいしたことないよ。ちょっと興味を持ったから自分で調べていただけだし、あれくらい誰でも知っていると思ってたけど」
「誰も知らないよ!」
「そう?」
「「うん!!」」
二人同時にうなずいた姿がものすごく笑えた。
「で、僕に何か用?」
はくすくす笑いながら、二人にそう聞いた。二人は顔を赤らめながら口を開いた。
「僕たちこれからハグリッドって森の番人のところにお茶しに行くんだけど、一緒に行かないかい?」
ハリーがそういった。
ハグリッドって言う名前を俺はどこかで聞いたことがあるような気がしていたが、よく思い出せなかった。
は俺の首筋をなでながら首をかしげていた。
「……僕が行って迷惑にならないかい?僕はハグリッドって人のことをまったく知らないんだ。それでも君たちがいいって言うなら一緒に行ってもいいけど…」
(ねぇ…。一緒に行って大丈夫かな……僕はスリザリンだからハリーたちと寮が違うし、怒られるかも……)
なんて、が俺に聞こえるようにささやいていた。
「大丈夫だよ。ハグリッドはやさしいもの。それには僕たちの友達だもの。友達を迷惑だなんて誰も思わないでしょ?」
……どうだか。
「そうかい?なら一緒に行ってもいいよ」
「「やった!!」」
二人同時に声が響く。
……この二人、あの赤毛の双子並に息がぴったり合っているかもしれない……そう思ってしまった。
禁じられた森の端にある木の小屋。
ハリーたちは俺たちをそこに案内した。
どうやらこの小屋に森の番人、ハグリッドなるものがすんでいるらしい。
ハリーがノックすると、戸をめちゃめちゃに引っかく音と、ブーンと、うなるようなほえ声が数回聞こえてきた。
全身の毛が逆立った。
……なんていうか…
こうやってほえて戸をバリバリと引っかくのがハグリッドって言うお茶に誘ってくれたやつだとしたら……
「…、随分臆病だったんだね。鬣が逆立ってるよ?」
に笑われてしまった……
扉が少し開いて、隙間から大きなひげもじゃの顔が現れた。
犬を押さえつけながら俺たちを部屋に招きいれてくれた。
「ハグリッド、こっちがロンで、こっちが」
「はじめまして」
ハリーが紹介してくれた。
ハグリッドはロックケーキとお茶を出しながら言った。
「赤毛はウィーズリー家の子かい?え?」
ハグリッドの目がロンのそばかすを見た気がした。
「…それから、そっちの子は………」
ハグリッドもこれまでに会った人と同じように驚いての顔をじろじろと眺めていた。
「…・です」
「……ああ、そうか」
何か苦い顔をしてから、ハグリッドは話題を変えた。
「その大きな獅子はお前さんのペットかい?」
「はい。って言います」
「動物好きに悪いやつはないって言うからな。遠慮せずにロックケーキを食べな」
…そういって硬そうなケーキを勧めてくれた。
はどこからかナイフを取り出して、ケーキを小さく切ると(すごく硬そうだったが)俺に少し分けてくれた。
俺は本来食べる必要のない動物だけれど、たまにはこうやって物をもらうときもある。
ハグリッドにもらったロックケーキは随分硬くて、歯が折れる思いがしたが、味は悪くなかった。
は小さく切って食べやすい大きさにしてから、無理に飲み込んでいる気がした。
……顔は笑顔だったけど。
それから授業のことを話して、フィルチのことを話して…………
どんどん時間は過ぎていった。
夕食の時間になる前に、城に戻った。
途中でハリーたちと別れたは誰にも見えない木の陰で俺にそっとささやいた。
「……グリンゴッツの事件が…ホグワーツを混乱に陥れそうな気がする………」
…と。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
スネイプ教授、登場!(爆)
二人はなかなか気に入られたようですが……
ハリーは嫌われちゃいました(苦笑)