秘密


 「間違いないわ」

 女子用トイレからがでてきた。
 入り口で待っていた僕にそう声をかける。

 やっぱりね。僕の読みは正しい。
 ここにサラザール・スリザリンの残した秘密の部屋へ続く入り口がある。



 少し長めの休暇の間、僕が図書室で借りたルーン文字の書籍に気になる一説があった。
 『入るのを拒むであろう場所』
 サラザール・スリザリンが入ることを拒むであろう場所。
 ホグワーツ創設者が入るのを拒む場所。
 …どこだか、察しはついた。
 でも、自分で確かめるほど馬鹿じゃない。
 だから、が帰ってくるまで待っていたのだ。

 「…でもだめよ。パーセルマウスじゃなきゃ入れないわ…」

 そうか…君にはまだ教えていなかったね。
 賢い君のことだから気づいているんだろうけど、気づかないふりをして…僕の口から聞きたいのかい?

 「僕を誰だと思ってるの?」
 「…容姿端麗、成績優秀、非の打ち所のない美青年、トム・リドル……

 いいえ、と彼女は言葉をつなげた。

 「私が知っている限りでは一番強力な魔法使いよ」

 とりあえず帰ろう。そういって、隠し部屋に戻った。















 彼女が紅茶を入れてくれたので、それを飲みながら話した。

 「…知ってたわ」
 「知らないふりをしてただろう?」
 「だって、あなたの口から直接聞きたかったのよ」

 くすくすと上品に彼女は微笑んだ。
 口元に当てた手は、僕が調合した薬を使っているらしく、荒れてはいなかった。
 細くて繊細な指に見とれてしまう。

 「最初からわかってたわ。サラザールの子孫だってこと」

 私は星を司るものですもの、っとおどけていた。

 「あなたならあの部屋の扉を開けられるかもね。でも、中に何がいるかわかっているの?」
 「ああ、わかっているつもりだよ。僕が手懐ける」
 「そう……」
 「でも、まだ今はだめだ」
 「ホグワーツの教師は秘密の部屋が開いたってことにすぐに気がつくわ。その辺も考慮したうえで考えないとだめよ」
 「ああ、本当にそうだね」
 「…秘密の部屋…ね……」
 「ん?」
 「この部屋だって秘密の部屋よね。私とヴォルの。サラザールも一人になりたかったのかしら、と思って」

 そうかもしれないね。
 サラザール・スリザリンは…やはり人との接触が苦手だったのかもしれない。
 憶測が飛び交うけれど…なんとなくわかる。

 「ヴォルが自分の名前が嫌いなのもわかったわ。嫌いになるのも当然よ」

 形のいい唇から僕の名前が呼ばれる。
 それは忌々しいマグルの名ではなくて、彼女がつけてくれた新しい名前。

 「ヴォルデモート…」
 「その名がそのうち人々が最も口にするのを恐れる名前になるよ」
 「…随分自信たっぷりね」
 「当たり前だろう。僕は夢をあきらめない」
 「…そう」

 少しぬるくなった紅茶に口付けた。
 彼女のきれいな手が僕の手に重なった。

 「…じゃあ、ちゃんと夢を叶えてね?……私の自由もあなたが持っているんだから」
 「必ず」

 そうさ必ず。
 僕は手にする。
 人々に恐れられる闇の魔法使いの地位を。
 マグルに…復讐を。































 僕たちはいつの間にか夢の中にいたらしい。
 の声が聞こえた。
 食事に行こう…と、そういっていた。

 と重なっていたはずの左手を握ると…まだの手がそこにあった。
 ほそくて繊細で軽やかな指。
 その手で僕に触れてほしい…と、思う。
 僕が闇の魔法使いの絶大なる地位を手に入れたら…
 君は僕に触れてくれるのだろうか…






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 秘密の部屋見っけ(爆)
 まだ見つけただけですけどね。今開けるのは得策じゃないと判断。
 一体この人たち何年生なんだろう…(←年齢設定考えてなかった/爆)