隠し事は体力勝負


 スリザリン寮のすぐ近くにある隠された小部屋。
 真夜中をとっくに過ぎたこの時間に、はまだここで、羊皮紙にしきりにペンを走らせている。
 ひざの上には薄手の布をかけ、机の上には眠気覚ましの珈琲が置いてある。

 きっかけは三日前のことだった。



 風呂に入り終えて部屋に戻った俺たちは、珍しく部屋で勉強しているヒューを見つけた。
 普段は談話室でみんなと勉強をしている彼だけに、一人で部屋にこもっている姿に少し驚いた。
 ヒューはを見ると、握っていたペンを机の上に置き、声をかけた。

 「、待ってたんだ。ちょっと協力してくれないか?」
 「協力?…僕に出来ることなら喜んで」

 笑顔で返事をしたに、ヒューは机の上に広げていた羊皮紙を見せた。
 の瞳が好奇心の色に変わる。
 羊皮紙にはも占い学の授業で扱っている、獣帯十二宮図が描かれていた
 多少の乱れはあるけれど、ヒューの丁寧な筆跡で星の記号が書き込まれている。

 「占い学の課題なんだ。これは僕の図だけど……課題内容が相性占いでさ。自分と誰かの獣帯十二宮図を描いて、それについてレポートを羊皮紙二巻き分。相性を占う相手を探してるんだけど、の図を教えてくれないかな?」
 「へぇ…面白いね。かなり高度な占いを六年生では扱うんだね。それなら、ちょっと待って。この前の課題で提出したやつの残りを持ってるよ、僕」

 整理された書棚から羊皮紙を一枚取り出したは、それをヒューに渡すと寝台の上に腰を下ろして、俺の毛を梳かしはじめた。

 この前はあんなに見せたがらなかったのに、今日はすんなりと渡すんだな。

 少し絡まったり逆立ったりした俺の鬣を丁寧に梳くは、微笑んでいる。
 ヒューはまたペンを持ち、教科書と羊皮紙を真剣に見つめている。

 (あれは書き直したやつなんだ、。本来の僕の星廻りは、この時代に生まれた同年代の人たちとも、ハリーやたちとも違ってる。それに気づかれちゃうと困るから、この時代の僕の誕生日の星廻りに書き直してあるんだ)

 が櫛を置いた。
 寝台の横の引き出しにその櫛を片付けた頃、ヒューも机の上にペンを置いた。
 羊皮紙を部屋の明かりに透かすと、軽く息を吐く。

 「面白いね。生まれた年や日付、時間が違うと、星の位置もずいぶん違うんだなぁ……ほら、僕たちかなり相性がいいみたいだ。まだ細かく見てないから、どういう部分で相性がいいのかはわからないんだけどね」

 大きく伸びをしたヒューは、手早く机の上を片付けると寝台の上に寝転がった。
 書きあがったばかりの羊皮紙を手渡されたは、それをじっと見つめている。
 黒のインクでヒューの星廻りが記されていて、濃い青のインクでの星廻りが記されていた。
 ぴくりと耳を動かしてを見た。
 が何か考え込んでいる。
 いきなり部屋に重なるようにして、数々の星が目の前に映しだされたものだから、俺は戸惑ってを見つめた。
 太陽系の主な星が目の前を素早く通り抜けて消えていく。
 短時間で宇宙旅行をしているような、妙な感覚だった。

 (これ、だ。これだったんだ。でもこれだけじゃ何の力も持たないはず……いや、でも、この形なんだ……)

 「ありがとう、ヒュー。僕たちの相性、詳しくわかったら教えてよ」
 「冗談言うなよ、。君は今それを見ただけで大体のことがわかっただろう?僕みたいに教科書とにらめっこしなくてもね。君はどの教科にも長けているけれど、殊占い学の能力が素晴らしい、と先生がおっしゃっていたよ。占い学に長けている生徒っていうのはほとんどいないらしいからね。先生が喜んでいらした」
 「そんな…それは、過大評価だよ。それに僕、ヒューの解釈が知りたいんだ」

 掛布をかけながらが微笑んだ。
 課題を受け取ったヒューは、それを大事にしまうと部屋の明かりを消した。
 よほど疲れていたのか、すぐにヒューの寝息が聞こえてきた。




 そしては、この三日間、毎日ヒューが寝るのを待ってから部屋を抜け出して、真夜中過ぎまでこの各誌部屋で、羊皮紙や水晶玉とにらめっこしている。
 仮眠程度の睡眠は取るものの、起床時間の前には談話室に戻り、何事も無かったかのように一日を過ごしている。

 「……できた。できたよ、

 眠くなって瞼が重くなってきた頃、が小さな声で少し浮かれながらそう言った。
 の手にした羊皮紙には、獣帯十二宮図が二つ、少し位置をずらして並んで描かれていた。
 二つ折りにすると、ちょうど中心で図が分かれる。

 何が出来たんだ、

 「左が、僕がこの時代に来た日の星廻り。右が僕のいた時代のあの日の星廻り。このままじゃただの対比図だけど、魔力をこめれば、二つの時代を行き来できるようになると思うんだ。元の時代へ帰るための枠組みが出来たっていう感じかな。一歩前進。少し気分が楽になったよ」

 その言葉に驚いて、俺はが大切に握った羊皮紙を覗き込んだ。
 そういえば、俺たちがここへ来る前に見た円陣の紙に似ている。

 あれはもっと色々書き込んであった気がするけど……

 それでもは安堵の笑みを浮かべていた。
 それだけで俺は満足だった。
 そのままはソファに倒れるように横になった。
 眠そうに欠伸を何度かして目をこすっている。
 窓の外は白んできていて、今日も充分な睡眠は取れそうに無かったが、は幸せそうな笑みを俺に向け、そのまま吸い込まれるように夢の中に誘われていった。
 俺も静かに瞼を閉じた。

 おやすみ、














 ほんの数時間で目覚めたは、部屋の片付けをさっさと済ますと、今朝方できあがったばかりの羊皮紙を大切にローブの中にしまって寮に戻った。
 目覚めるように、と熱い珈琲を談話室で飲む。
 この三日の疲れがどっと出たのか、は少し青白い顔をして二、三度咳き込んだ。
 いつもより体が火照っているように感じる。

 風邪をひいたんじゃないか?あれだけ根を詰めてやっていたんだし、今日は休んだらどうだ?

 けれどは軽く首を横に振った。

 (まだ枠組みが出来ただけ。前進はしたけれど、肝心の魔法についてはさっぱりだ。もっと調べなくちゃ。休んではいられないよ。それに、今日の授業が終われば週末だもの。そこで少し休む時間も取れるだろうから、今日は頑張るよ)

 あまり無理はするなよ。体調を崩したら元も子もないんだから。

 (心配してくれてありがとう、。でも大丈夫だよ。まったく進む方向がわからないまま調べ続けていた頃より、気持ちは軽いんだ。課題は多いけど、進む道が見えただけでも少し楽になった)

 わさわさと首筋を撫でられ、俺はに擦り寄った。
 火照った体のは、優しい笑みを浮かべて俺を見ていた。
 不安や迷いが少し消えたの心は、三日前よりも明るくなったように思える。
 疲れは感じるが、今日のは穏やかだ。



 奥から、大きな欠伸をしたヒューが寝癖を気にしながらやってきた。
 珈琲を手にすると、の向かい側に腰掛ける。

 「今日も早いな、。毎日こんな早い時間に起きて眠くないのかい?僕はまだ眠いよ。監督生になるまでは、朝起きるのが一番遅かったんだ」
 「朝には強いんだ、僕。どうしても朝起きられない友達がいてね。そんな彼を放っておけなくて、なんだかいつも早く目覚めちゃうようになったんだ」
 「へぇ…以前いた学校のルームメイトか何かかい?」
 「…うん。今はずっと遠くにいるけど、僕の大切な親友さ。ちょっとヒューに似てるかな。頭がよくて何でも出来て、狡猾で……僕より背も高くてね。並んで歩くと悔しくなるんだ。彼のほうが綺麗な顔をしていると僕は思うんだけど、いつも僕のほうが「お嬢さん」なんて呼ばれちゃって」

 笑顔で話すを、ヒューが柔らかい瞳で見つめていた。
 思い出したようにが笑うと、その度に薄らの顔が頭に浮かんでくる。
 懐かしくて、俺も少し口元を緩めた。
 一ヶ月が過ぎ、この時代での生活に慣れてきて、友達もたくさん出来たけど、はこんなにも鮮明にのことを思い出す。
 多分は、俺以上に元の時代に戻りたいと思っているんだろう……

 「遠く…ね。大丈夫さ、。距離なんて関係ない。心がつながっていればいつでも会える。にそんなに大切に思われてるなんて、その子は幸せものだな」

 やがて数人が談話室にやってきて、いつもの朝が始まった。
 はヒューの言葉をかみ締めるようにして笑みを浮かべながら、一日の始まりを感じたようだった。























 一日の授業をそつなくこなしたは、本日最後の授業である呪文学を終えて寮へ戻るところだった。
 やはり体調を崩し始めているのか、昼食はほとんど口にしなかった。
 今こうして歩いている足取りも、いつもより相当ゆっくりで、どこかふらふらしているようにも見える。
 多くの生徒たちはのはるか前方の角を曲がっている。
 どうやらが最後のようだ。

 ま、ゆっくりいこう、。寮に戻ったら今日は早く寝て体調を整えよう。

 (うん、そうするよ。やっぱり少し無理をしちゃったか…な……)

 無理に微笑んだだったが、いきなり階段の手前で手すりに手をかけたまま動きを止めた。
 軽く額を押さえている。青白い顔をして、なんだか苦しそうだ。
 心配する俺の心が伝わったのか、は大丈夫、と小さく唇を動かして笑ったが、の体が小さく震えているのを俺は見逃さなかった。

 大丈夫じゃないだろ、。医務室に行こう。薬をもらって安静にしたほうがいい。

 深く息を吐いたは、俺の体に触れ、また歩き始めた。
 の体は朝よりも熱く、相当熱があるように思える。

 (ちょっと眩暈がしただけ。大丈夫だよ、。とりあえず寮に行こう)

 「見つけた!っ!!

 歩きはじめたの後方から声がした。
 それは、今一番聞きたくなかった声だった。
 の唇が言葉を捜しているかのように、小さく動くが、シリウス・ブラックの声にかき消されてしまう。
 激しい戸惑いが流れ込んできて、の歩みが止まった。

 行こう、。あいつらのことも気になるけど、今はの体が大事だ。

 鼻先での脚を小突き、前に進むように促した。

 「ま、待て!無視するなってばっ!」
 「そうだよ!今日は悪戯をしにきたんじゃないんだ。僕たちの話を聞いてほしいんだ!」

 シリウス・ブラックに気を取られている間に、どこから現れたのか、の前方にジェームズ・ポッターが立っていた。
 が一歩後ろに下がる。
 今のの体調で、彼らと関わるのは出来そうに無かった。

 かまうな、

 行くぞ、とジェームズ・ポッターを押しのけて、俺はの進む道を作る。
 は険しい表情をしてジェームズ・ポッターを見ている。
 後ろから、シリウス・ブラックが近づいてくる足音がする。

 「悪いけど、君たちにかまってるほど暇じゃないんだ。寮に戻らなくちゃ」
 「だから!そうやって聞く耳持たずに僕らの前から去ろうとしないで、少しは話を聞いて!」
 「…どいてくれないか」

 階段の踊り場あたりからリーマス・ルーピンが飛び出し、両手を広げての前に立ちふさがった。
 その横を、と俺が彼を押し分けて強引に進んでいく。

 ぱさり、と音がした。
 リーマス・ルーピンがのローブを引っ張った弾みで、ローブの中にしまってあった羊皮紙が落ちた。
 の顔がますます青くなる。
 慌てて手を伸ばしたよりも先に、その羊皮紙に触れる手があった。
 その手と、指の一本欠けた手が重なって見える。
 思わず手を引っ込めたの息は荒くなり、苦しそうな表情で視線を泳がせている。
 一瞬、目の前が渦を巻いた。

 、もしかして……

 「ね、。僕たちの話を聞い……」
 「ピーター、どけって!どうしても俺たちから逃げるって言うなら、掴まえてやっ……なっ?!あ?!

 叫びにも似たシリウス・ブラックの声。
 階段の一歩手前で転んだシリウス・ブラックが何かにぶつかる音がして……

 それは一瞬の出来事だった。
 シリウス・ブラックの声に反応したピーター・ペティグリューが体を横に退けたその後ろから、シリウス・ブラックがを掴まえようと勢いをつけてやってきた。
 眩暈を覚えて額を抱えていたは、シリウス・ブラックを避けることができなかった。
 いや、それだけじゃない。
 シリウス・ブラックの体との体が触れる直前、の体がふらっと後ろによろめいたのを俺は見た。
 大きな音がする。

 の体が、階段を勢いよく転がっていく………

 っ!!

 考えるより先に体が動いた。
 呆然としているシリウス・ブラックを軽く飛び越えると、の体を追いかけて階段を下った。
 まったく抵抗しようとせずに、階段を落ちていくの体。





 どんっという強い衝撃が全身に走る。
 の体が階下の壁に激突する前に、何とか回りこんでの体を受け止めた。

 

 青白い顔をしたの瞳はきつく閉じられたままだ。
 微かに苦しそうな呼吸が聞こえる。
 何度も声をかけ、唸り、顔を舐めたり腕を甘噛みしたりしたが、は苦痛に顔をゆがめるだけで動かない。
 どたどたと慌てた足音と、の名を呼ぶ声が聞こえた。



 我慢の限界だった。
 の体調が悪いのは一目瞭然だったじゃないか。
 それをこいつらは……

 俺の中で、何かがはじけた。


 ピーター・ペティグリューが恐る恐るに触れようとするのを、俺の手が止めた。

 「触るなっ!

 「なっ?!君は一体……」

 こいつらになんか絶対を触れさせるものか。

 俺は動かないを抱きかかえた。
 血を見るような怪我はしていないようで、安心した。
 それでも俺は、をこんな目にあわせた悪戯仕掛人たちを許せない、ときつくにらみつけた。
 見慣れぬ俺の姿に、奴らの目は驚きを隠せていない。

 「その羊皮紙を返せ。お前みたいな奴が触っていいものじゃない。それはの大切なものだ」
 「……君は、一体誰なの?!ねぇ、は大丈夫?まさかが何の抵抗もしないなんて思わなくて……」

 おびえてジェームズ・ポッターの後ろに隠れていたピーター・ペティグリューから、半ばもぎ取るような形での羊皮紙を取り返した。
 怒りが収まらない。
 辛そうなの額についた髪を払う。

 「…君が誰だっていい。のことが心配なんだ。医務室に……」

 に手を触れようとするジェームズ・ポッターの手を俺が払いのける。
 あまりに辛そうな表情をしているを、これ以上こいつらと接触させたくなかった。
 また何をされるかわからないじゃないか。

 …生きててよかった、……

 「心配、だって?体調の優れないを階段から突き落としておいて、心配、だと?」
 「そんなつもりじゃなかったんだ!俺に、いつものならこれくらい軽くかわすじゃないか!こっちだって、本気になってかからなきゃ、は俺たちの話を聞こうとさえしなかった。だからっ……」
 「待って、シリウス!喧嘩してる場合じゃないだろっ!体調が優れなかっただって?一体どういうことなんだい?お願いだ、話してくれ。そうじゃないと、僕たち何も出来ない。僕たちは本当に、ただと話がしたかったんだ」

 ジェームズ・ポッターの必死な眼差しはハリーを思い出させる。
 俺はこいつらを許せない。でも……
 の苦しそうな顔を見ているのも辛い。
 とにかくどこか静かなところにを寝かしに行こう。
 深く息を吐くと、俺はなるべく自分の感情を抑えて慣れない声を使った。

 「…本当にを傷つけるつもりが無くて、話がしたかったのならついてこい。ただし、目覚めたがお前たちと話をするかどうかはわからないがな」

 を抱えて歩き出した俺の数歩後ろを、四人が重苦しい空気を漂わせてついてきた。
 抱きかかえたの体は思いのほか軽くて驚いた。
 このところ食事の量も減ってきていたみたいだし、こっちにきてますます細くなったのかもしれない。







 隠し部屋の扉を開けると、の体をソファに横たえた。
 がよくクッションや掛布を、慣れない指でつかむと、なるべく苦痛が和らぐように工夫してみる。
 部屋に入った四人はソファの周りに腰を下ろして部屋の中を眺め、心配そうな表情でを覗き込んだ。

 「それで、の体調が優れないって言うのは……」

 おずおずと尋ねるジェームズ・ポッターに、俺は感情をむき出しにした視線しか送れなかった。
 冷たい水に浸した布をの額に載せる。

 「ここ三日ほど、は仮眠程度の睡眠しか取っていなかった。それだけ集中して、やっと今朝方この羊皮紙に纏め上げたばかりなんだ。 今日は一日中、疲れからか青い顔をしてた。の歩みがふらついていることに気づかなかったのか?お前たちは、他人のことを、のことを全く考えずに、自らの楽しみのためだけに悪戯をしてばかりだ。新しい環境に戸惑うのことを、思いやることすらしない。そんな奴らが、今更自分たちがしてしまったことでを心配するなんて……」
 「それ、は……がいつも僕たちだけを避けるから……他の子には優しい目を向けるが、僕たちにだけ、冷たくて噛み付くような視線を向けるから……」
 「言い訳だ。言い訳ばかりだ。がどれだけお前たちのことで悩んで涙を流したのか、知らないくせに」

 吐き出した言葉は部屋の中に吸い込まれていった。
 辛そうなの髪を撫でながら、俺はきつく奴らを見ることしか出来ない。

 何度が涙を流したと思っているんだ。
 どれだけ苦しんだと思っているんだ。
 それでだって、感情の制御がきかなくなったことはあれど、自らの意思でこいつらの悪戯に反抗したことは無いんだ。

 への思いばかりが溢れてくる。
 どうしても怒りが収まらなかった。
 いっそのこと、俺たちの立場を全て叫んでしまいたいくらいだ。


 そう思ってはっとする。
 が常に格闘している気持ちが、これなんだ。

 「……ごめんなさい」

 嗚咽にも似たか細い声が聞こえた。
 目に涙を一杯溜めたピーター・ペティグリューが俺を見ていた。

 「僕、と仲良くなりたかったんだ。でもはいつも僕に冷たくて……だけど、当たり前だよね。僕たち、に悪戯しかしてないもの。ちゃんと話しかけたことなんてなくて……」
 「……ごめん。ピーターの言うとおりだ。僕たちは一度も、にちゃんと話しかけたことがない。いつも悪戯ばかりして、何とか僕たちを相手にしてくれるように、って思ってたんだ。でも、こんなことになっちゃって……間違いだった。悪戯じゃなくて、ちゃんと話しかけるべきだった……」
 「俺に謝るんじゃなくて、に直接言え。もっとも……しばらく目覚めそうに無いけどな……」

 直に接してみてはじめてわかる。
 はこいつらとこんな気持ちで関わっていたのか、と。
 俺には耐えられそうにない。
 彼ら自身を見なくちゃ、とはいい、俺もそんなことをに言った。
 でもそれがどんなに難しいことなのか、今やっとわかった。
 シリウス・ブラックとピーター・ペティグリュー、それにリーマス・ルーピンは……どう見たって、奴らの未来の姿を思い出さずにいられない。
 おまけにジェームズ・ポッターはハリーに似すぎている。

 しんと静まり返った部屋で、俺はただが目覚めるのを待つしかなかった。






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 誰よりも一番を思っているのは、いつも傍にいる