買い物


 翌日、と俺はに連れられてダイアゴン横丁にやってきた。
 周りには黒いローブを着、三角の帽子をかぶった魔法使いや、魔女がたくさんいる。
 普段の生活では見れない異様な光景だった。

 「ここがダイアゴン横丁ですか?」
 「そうよ。、リストを見て御覧なさい。何が必要かしら?」
 「ええと…制服と、教科書と、それから…」
 「あら、ずいぶんとたくさんね。まず何を買おうかしら……」

 はしばらく考えていた。俺はの足元で大きなあくびをした。
 が人ごみが嫌いなので朝早くにやってきたせいで眠たかったのだ。
 それをに見られて笑われた。

 「ったら、そんな大きなあくびしちゃって…眠いの?」

 って。
 少し恥ずかしくてそっぽを向いたら、はごめんって笑いながら謝ってきた。
 別にが悪いわけじゃない。だからなんか俺が悪くなった気がしてしまった。
 別に怒ってないよ、と、の足に体を摺り寄せたらがなでてくれた。

 「それじゃあ…、まずは制服を買いましょうか。マダムマルキンのお店に行って丈合わせをしてもらいましょう。その間に私が学用品を買ってきますから」
 「はい、母上」

 は慣れた足取りで洋装店まで歩いていく。
 は目に入るものすべてが珍しいらしく、周りを見渡しながら歩いていた。
 おかげで俺が引っ張らないとを見失ってしまうところだったときも何度もあった。

 「だって、。あの本にすごく興味があったんだもの…」

 は名残惜しそうに本屋の外に出ている本を眺めていたが、の姿が小さくなっているのに気がついたらしく、急いでの後についていった。



 マダムマルキンの洋装店には二人の先客がいた。
 がマルキンに話をつけると、俺も店の中に入っていいことになった。
 と俺は店の奥に連れて行かれた。
 はめがねをかけている男の子の隣の踏み台に乗り、上から長いローブをかけられていた。

 「やあ。君もホグワーツかい?」

 今まで黒い髪の子と話をしていたもう一人の子がに話しかけた。

 「うん。今年入学するんだ。君たちは?」

 無邪気なは人見知りをすることなく話しかける。

 「僕も今年入学さ。今、父は隣で教科書を買っているし、母どこかその先で杖を見てる」

 気取った話し方をするやつだった。正直、俺は好きになれない。
 それにぺらぺらとよくしゃべる。
 耳につくその独特の声は、動物で耳のいい俺には少しうるさく聞こえた。
 …でもは、自分と同じ年頃の子供に会うのは今日が初めてだから、すごく楽しそうにしていた。

 そのうち、黒い髪の男の子の採寸が終わった。

 「じゃ、ホグワーツでまた会おう。たぶんね」

 気取った男の子はそういっていた。それから、のほうを向いてまたしゃべりだした。
 は笑顔でその子の話を聞いていた。

 「…君はどの寮に入ると思う?さっきの子はよくわからなかったみたいだけど」

 が入る寮なんて…決まっているさ。天変地異でもない限り。
 俺はそう思って、低くうなった。けれど、それはの耳には届かなかった。

 「どうだろう…実際行ってみないとわからないね。でも僕の両親はどちらもスリザリン寮出身だから、スリザリンかな?」

 くすくすと笑いながらそう話す。

 「君とは気が合いそうだ。僕もスリザリン以外はありえないと思うんだ」

 そのとき、男の子の採寸が終わった。

 「それじゃ、お先に。ホグワーツでまた会おう」

 そういって気取った子は店の奥から入口近くへといってしまった。

 「…ね、。ホグワーツって面白そうなところだね。今の二人の男の子も、ほかの子も。もっといろんな子がいるんだろうなぁ…」

 は無邪気に微笑んでいた。





 制服が終わると、俺たちは杖を見に行った。
 古くて狭い小さな店だった。
 そんな店の中に天井近くまで整然と細長い箱が何千と積み重ねられていた。

 「いらっしゃいませ」

 店の奥から柔らかい声がした。
 大きな薄い色の目が二つ、月のように輝いた老人だった。
 は慣れているらしく、こんにちは、と笑顔で挨拶をしていたが、俺とは驚いた。
 は一歩後ろに下がってたし、俺の体中の毛は逆立っている。

 でも。
 老人もの姿を見て心底驚いていたみたいだった。

 「…君は…君の瞳は……」

 老人はにものすごく近づいて、まじまじとの顔を見ていた。

 漆黒の髪に白い肌。瞳は俺の鬣よりも鮮やかな紅色。
 に似ている…というよりは、父親似だ。
 顔は整っているし、背も割りと高い。それが
 は老人に見られて、少し恥ずかしそうにしていた。

 「なるほど…君も今年、ホグワーツに入学するのかの。…いやいや…ああ、すまんの。杖を探しているんじゃったな。今出してこよう」

 そういうとその老人は店の奥に入っていった。
 すぐにいくつか箱を持ってきた。

 「これは、ぶなの木に一角獣のたてがみ。24センチ。さ、振って御覧なさい」

 はその不思議な杖を手に取ると一度振ってみた。
 すると、店の中に竜巻が起こり、天井近くまで積んであった杖の箱が全部落ちてきたではないか。
 俺とは杖の箱の中に埋まってしまった。
 はけらけら笑い、杖を老人に返した。

 「ふむ。それではこれはどうかの。樫の木にドラゴンの心臓の琴線。28センチ。硬めだが振りやすい杖」

 一度あんなことがあったから、俺は身構えていた。
 も少し戸惑いながら杖を振ったけれど、やはりすごいことがおきた。

 …もう杖、要らないんじゃないか?

 が杖を振ったとたん、天井から大量の動物が降ってきて、俺たちはその動物と杖の箱に埋もれた。



 それから三十分経ってもにあう杖は見つからなかった。
 いい加減飽きてきた。

 「…ふむ。ではこれはどうかの。なかなか強力な杖だから、滅多に出さないのじゃが…」

 そういって老人は店の奥のほうから杖を取り出してきた。

 「イチイの木に聖獣紅獅子のたてがみ。28センチ。良質」

 も杖を振ることに飽きたらしく、軽く振ってみた。
 すると、どうだ。杖の先から真っ赤な光が飛び出したんだ。
 その光は俺たちを包み込むようにずっと光り続けていた。

 「あら。やっといいのが見つかったじゃない。よかったわね」
 「この杖を使いこなしますか。さすがですな」


 こうして無事に杖も買うことができた。
 その後は教科書を買いに行った。
 教科書を一式本屋でそろえると、は何冊か、何も書いていない本も一緒に買った。
 その中にはが朝、ずっと見つめていた本が含まれていた。いったい何のために買ったんだろう…

 「ペットはいいわね。あなたにはがいるものね」
 「…でも母上、は猫でも、ヒキガエルでも、ふくろうでもありません。ホグワーツに連れて行っても大丈夫なのでしょうか?」
 「そんなこと、心配しなくて大丈夫よ。ちゃんとダンブルドア校長に許可を取ってあげましたからね」
 「…ありがとうございます!を連れて行ってもいいんですね?よかった。…僕、と離れるのはいやなんです」

 帰り道、がそういっていた。
 が笑っているのが聞こえた。がぎゅっと俺を抱きしめた。
 俺は少し照れくさかった。でも、とってもうれしかった。
 が俺のことを思っていてくれることがとてもうれしかった。






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 本来私はギャグをあまり書かない人種なので…(爆)
 笑いの取れるのは難しいかなぁ……
 とか、思いながら、必死に書いてみる今日この頃。