屋敷僕妖精
ドラコの家は…広かった。
そりゃ、の家も広かったさ。
でも、それ以上。
物にあふれてるって言ったほうがいいのかな。
とにかく広いし豪華。
目が回りそうな屋敷だった。
屋敷に入ったら綺麗な人が出迎えてくれた。
ドラコのお母さんらしい。
美人だった。
着ている洋服はの母同様ドレスで、すごく高そう。
着飾ってるってわけでもなくて、それが普段着らしかった。
その豪華な服を着こなすところがさすがだと思う。
「こちらが、ホグワーツの友人です」
ドラコが丁寧にを紹介する。
「はじめまして。・と申します」
が笑顔で挨拶をする。
ドラコのお母さんは綺麗だったけど、やっぱりマルフォイ氏と同じように厳格そうだった。
なるほど、こんな屋敷で生活してたらドラコみたいな子供に育つ…
「、こっちだ。部屋へ案内しよう」
言われるがまま、ドラコについて部屋に向かう。
が手にしていた荷物は、みょうちくりんな生き物がせこせこ運んでいったので、は身軽だった。
なんていうか…この綺麗な屋敷にはあわない変な生き物だったなぁ…
小さいし、ちょっと捕まえるのにいいサイズ…
「……ドラコ、この小さな生き物はなんだい?」
「え?……ああ、屋敷僕妖精だよ。の家にもいるだろう?」
「屋敷僕妖精…へぇ、これが……」
「見たことなかったのかい?」
「ああ。たぶんいるんだろうけど、見かけないな」
「君の家も不思議だな」
「そう?それ、の家に遊びに行ったときも言われたんだ」
「…の家にも屋敷僕妖精はいるのか?」
「ああ…確か…『見た目上麗しくないので使ってない』っていってたな」
まったくの家族らしい。
確かに変な生き物だ。
みょうちくりんで、耳はとんがってて…肌の色があんまり綺麗じゃなくて…それに着てるものが変だ。
「さ、ここが君の部屋だ。屋敷に滞在している間は自由に使ってくれてかまわない」
そういわれて案内された部屋は、やっぱり綺麗だった。
廊下を見たらずらーっと部屋部屋部屋……
絶対迷う!
「ありがとう」
「荷物が整理し終わったときくらいにまた来るよ。いろいろ話がしたい」
「わかった」
屋敷僕妖精たちはのホグワーツに行くための荷物を全部運んでいた。
ありがとう。
そう、がいったら妖精たちがわらわらと集まって、俺をしげしげと見つめた。
それから、みんな感激の顔をしてた。
本当に変なやつらだった。
それから部屋を眺めた。
ベッドと、ソファーと…やっぱり小さなシャンデリアが明かりだ。
それから高級そうな家具。壁にかけられた絵。
ちょっと不思議な雰囲気の部屋。
その後ドラコがやってきて、屋敷の中を案内してくれた。
広くて迷子になりそうだったから、にしっかりついていった。
「…この部屋はなんだい?」
いくつか部屋を見せてもらった後で、どう考えてもこれはおかしいだろう、という部屋がひとつあった。
壁に埋め込まれた、強引な扉。
鍵がかかってて開けられそうにない。
「そこは…開かずの間だ」
「へぇ…」
「絶対、入るなよ。恐ろしいことになる」
「……ドラコは入ったことが?」
「まさか!その部屋に入ったら命はないよ…」
あのドラコがおびえるくらいだから、すごい部屋なんだろうな……
近づいて匂いをかいだら、ほのかにあいつのにおいがした。
なんだったんだろう……
「で、ここが書室だ。これで一通り全部かな」
一通りって……家の中案内するのに一時間もかかるなんてさ…すごいな…
「さすが、ドラコの屋敷だ」
「これくらい普通さ。ああ、まあ、ウィーズリー家なんかとは比べ物にもならないだろうけど」
鼻で笑う。
「そうだ、宿題を見てほしいんだ」
「良いよ。そんなに難しくなかったと思うんだけど」
広い部屋に帰って、机の上に宿題を広げてドラコと宿題をした。
なかなか楽しかった。
ドラコは決して頭が悪いわけじゃないし、提出物とかもちゃんとしてる。
性格は曲がってるけどさ。
それでも、一緒にいて楽しいやつだと思う。
その後、チェスゲームをして遊んだ。
いくらやってもに勝てないドラコがすっごい不機嫌になって彼の頬がふくれたときは爆笑した。
やっぱり、子供だよ。
それに、親にはすごい従順なドラコだし、そういうところも含めて全部ドラコの家は不思議な空間だった。
夜になって、夕食も終えて(すごい豪華だった)のんびりしていたらぼわんって音がした。
が人の姿になったのかと思ったけど、はベッドの上でのんびりしてた。
「………何か用?」
その、ベッドの上でのんびりしているの上に、屋敷僕妖精がいた。
ええと…みんな同じ姿に見える……
「・!…ドビーめはあなたにお目にかかりたかった。ハリー・ポッターが……」
「落ち着いてよ…ええと、ドビー…?」
「はい、屋敷僕妖精のドビーめにございます。ドビーと呼び捨ててください」
「そう……ええと、何か僕に話したいことがあるのかな?」
正直驚いた。
僕の荷物を運んだり、食器を片付けたりしていた屋敷僕妖精があまりにも突然に、それもの上に現れるから。
はむずかゆそうに体を揺り動かしていたけれど、ドビーは降りる気はなさそうだった。
気に入ったらしい。
「…そうでございます。ドビーめは・にお話があるのでございます。あの有名なハリー・ポッターが……」
「ハリーの話か…ね、落ち着いて最初から話してもらえるかな。ええと…座ってよ」
「座ってだなんて!!」
耳を劈くような大声がした。
気を悪くしたのかな。
屋敷僕妖精の扱いには慣れていないからどう対応していいのかわからない。
「ハリー・ポッターもドビーめに座ってと言ってくれました。・もドビーめをまるで対等に扱ってくれるのでございます…」
感謝感激雨あられ…
うれし泣きされてちょっと驚いた。
「ハリー・ポッターは今年、ホグワーツに戻ってはならないのでございます!危険なことが…ホグワーツで起こるのでございます」
「そう」
「ドビーめは、ハリー・ポッターにそれをお伝えしたのでございます。ですが…」
「…聞かなかったでしょ?」
「はい…」
それはそうだよな…
ホグワーツは楽しい。
ハリーにとって…マグルの窮屈な生活を強いられているハリーにとって、魔法使いの中で生活できるホグワーツがどれほど楽しいか…
想像に余りあると思う。
ドビー…は、の耳元で騒ぎ立てるから、が耳をぴくぴくさせてちょっと怖い顔をした。
うるさそうだ…
「悪いことが怒るのでございます…ドビーめは……」
急にあ〜…と、うなって、ドビーは壁に頭を打ち付けた。
「ちょっ……自分を傷つけちゃだめ。落ち着いて。……ええと…紅茶は好きかい?」
マグカップに紅茶を入れて渡したらまたうれし泣きされた。
「ドビーめに紅茶を入れてくださった。・が……」
「わかったから……で、何が起こるかはいえないんだね」
「はい……ですが、これは言えるでございます。日記…日記が関わっているでございます」
…日記。
「正しいものなら決して使わない…恐ろしい力が……ホグワーツを……」
今度は丸いテーブルの上にあったポットから熱湯を体にかけようとした。
すんでのところで、僕が止めたけど。
どうも、屋敷僕妖精って言うのはへりくだった態度でいけない。
妖精という立場だけで今まであしらわれてきたのが目に見えてわかる。
の家が人の使用人を使うわけがよくわかった。
「・。これはあなたにも大いに関係することでございます!」
…僕に関係すること?
なんだか、よくわからなくて首をかしげた。
ああ、でもこれが、占いで言っていた『秘密』のことなんだろう。
おそらくは……
「そう…ドビーめはハリー・ポッターがホグワーツに行くのをとめるでございます」
「へぇ…」
「重大事件でございます!ハリー・ポッターの命に関わる…ハリー・ポッターだけではないでございますよ」
ドビーは付け加えた。
「・にも重大な危険を及ぼします…事件でございます」
そういってから、手にしていたマグカップで自分の頭をたたき始めたから大変だ。
必死にマグカップを奪って、ドビーをベッドの上に座らせた。
疲れるね、屋敷僕妖精との会話は。
「わかった。じゃあ気をつけておくよ。連絡ありがとう」
「ありがとうと…」
泣かれそうになった。
「ええと…ドビーはが気にいているみたいだね、の背中に乗って部屋を歩いてみるかい?」
話題を変えた。
が恨みがましく僕を見ていたけど、ドビーが喜んでの背中に乗ると、のろのろと立ち上がって部屋の端から端まで一周歩いてくれた。
「…楽しいでございます!…ああ、でもドビーめはそろそろ行かなくてはならないのでございます」
恭しくお辞儀をしたドビーはばふんっと音を立てて消えた。
なかなか疲れた時間だった。
は僕の元にやってきて軽く腕を甘噛みした。
「ごめんよ、でも、屋敷僕妖精の扱いには慣れてないんだ」
の体を優しくなでながらそういった。
も機嫌を直してくれたのか、僕のひざの上で目を瞑っていた。
……秘密…というにはまだ情報が少なすぎる。
ちょっと探りを入れるべきだろうか…とか、一人で考えてた。
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ドラコの家。そしてドビー。
可愛いねぇ…ドビーのしゃべり方とかつぼにはまります。