ポリジュース
決闘クラブの後、ハリーとのサラザール・スリザリン継承者説はとどまるところを知らなかった。
うわさには尾ひれが付いて駆け回るというけれど、コリンが襲われたことでハリーのうわさは疑問符がつけられた。
でも、へのうわさは広まるばかり。
自身はそれを楽しんでいるようだし、ももうわさなんて信用しないけれど。
ただ、俺としてはがそんな風にみんなから避けられるのを見るのはとっても苦しいことで、早くうわさが収まればいいのにと思ってならなかった。
それで、結局ハリーにマグル出身だと自分からばらしてしまい、自分の部屋に隠れていたはずのジャスティンが襲われたんだ。
けしかけたのはハリーでもでもない。
おそらくは犯人に気がついているのだろうけれど、疑問が湧いているらしく俺には話してくれない。
ジャスティンが襲われたのを知ると、クリスマス休暇に家へ帰る人が多くなった。
スリザリン寮は、、、ドラコ、クラッブ、ゴイルの五人だけだった。
グリフィンドール寮は、ロンの兄弟とハリーとハーマイオニーくらいしか残っていないみたいだ。
ホグワーツはがらんとしていた。
そんなこんなで今日はクリスマス。
朝目覚めたら、今年はのほうが早く目覚めていた。
去年のように宙を浮いているわけでもなく、普段のようにローブをまとってあったかいココアを飲んでいた。
「、メリークリスマス」
朝一番のの抱擁は優しくてよい香りがした。
「はい、クリスマスプレゼントだよ」
去年のクリスマスプレゼントはイアリングというかピアスというか……
ずっと昔に俺の耳に開いた穴にリングを通すようになっているやつ。
今年はなにをくれるのかと思っていたら、は自分の左腕にはめているのと同じような腕輪を俺の前足にはめた。
いくらなんでもサイズが合わないだろうと思っていたら、しゅぅ〜って言って、俺の手のサイズにぴったりにはまった。
さすが魔法…
「…それにしても毎年すごい量だな……」
プレゼントでごった返したベッドの中から這い出すようにして起きてきたはの隣に座ると苦笑した。
今年も去年と同じで部屋のほとんどがプレゼントで埋め尽くされていた。
…とはいえ、もも、必要の無い相手からのものは処分しちゃうんだけど……
この二人って、容赦しないからなぁ……
「母上からは……あれ、これって……」
は、からの小さな箱の中身をじっと見つめていた。
まぁいいさ。
きっと後で俺に話してくれるから。
「…ほら、またあったよ……」
のあきれた声と、手に握られたチャイナドレス。
にもウェディングドレスが送られてきていて、二人で苦笑しながら燃やしていた…
プレゼントを片付けるのに、二人は一日の半分を費やしたのだった……
夕食近くになって、僕は水晶玉を覗き込んだ。
ホグワーツではいつもクリスマスとかハロウィーンとか…行事の日に限ってなにかが起こる。
だから今回も何か起きるんじゃないかと思って僕は水晶玉を覗いた。
いろんなことが起きるおかげで僕の魔力は増大していってるんだけどね…
「あれ……」
覗いた水晶玉に映ったのは、ハリー、ロン、ハーマイオニーを司る星。
それから、クラッブとゴイルと…猫……の星。
ハリーとロンがクラッブとゴイルの星と交わっていた……ハーマイオニーは……
「またあの三人は無茶なことをしようとしてるんだ……」
ため息が零れ落ちた。
まさかとは思ったけど、夕食のときに、三人が大広間を出て行ったのを見た。
はそれに気がついていた。
おそらく今夜何かがあるだろうと思っていた僕らは、早めに食事を切り上げて寮の談話室にいることにした。
「…ハリー・ポッターとその仲間たちは静かにしていることができないのかい?」
「仕方ないよ、彼だって自分の身に振りかけられたうわさを払うために必死なんだから」
「それにしたって……」
僕たちが会話をしているとなんだか雰囲気の違うクラッブとゴイルを連れたドラコが談話室に入ってきた。
「やっとこの二人を見つけたよ」
「お疲れ様、ドラコ。二人とも突っ立ってないで座ったら?」
明らかにクラッブの歩き方じゃない…と思った。
変身するなら見た目だけじゃなくて、仕草もそっくりにしないと気づかれるよ?ハリーにロン……
は横で首を振っていた。
クラッブとゴイルが自分の隣に座るのがよほど気に食わなかったみたいで、僕の隣に移動してきた。
…おそらくも気がついているだろう。
さすが、勘の鋭い友人を持つといいことがある。
「…これは笑えるぞ」
日刊預言者新聞の切抜き。
ドラコが声を出して読み終えると、僕もも笑いが収まらなかった。
クラッブとゴイルらしき人物は無理に声を出しているようだった。
「おかしいだろう?ウィーズリーの連中の行動を見てみろ。本当に純血かどうか怪しいもんだ」
「誇り高き純血の魔法族…その意識が薄いんだろうな」
クラッブの顔が怒りでゆがんだ。
「クラッブ、どうかしたか?」
「…腹が痛い」
くすり、と僕とが笑った。
「ああ、それなら医務室に行け。あそこにいる『穢れた血』の連中を、僕からだといって蹴っ飛ばしてやれ」
「石化してるから、蹴っ飛ばしても痛みを感じないって」
「それもそうだな」
ますますクラッブとゴイルの顔が怒りでゆがんだものだから、僕はこらえきれなくて言ってしまった。
「クラッブもゴイルも、時間を考えたほうがいいんじゃない?」
チラッと時計を見れば、おそらく彼らが変身するのに使ったポリジュース薬の効き目が切れるまであと少し。
この場で姿が元に戻るのもみものだなぁ……
「いったい誰が継承者なのか僕が知っていたらなぁ。手伝ってやれるのに」
クラッブの顔がいつもよりもっと愚鈍に見えた。
噴出しそうになってあわててこらえた。
も肩が震えている。
は、おそらく二人の匂いで二人じゃないって事を既に知っているのだろう。
僕のひざに乗っかっては、二人の姿をチラッと見てため息をついている。
「父上はすべてご存知だし、すべてが沈黙させられているから、僕がそのことを知りすぎていいると怪しまれるとおっしゃるんだ。……そういえば、やは何か知らないのかい?」
「秘密の部屋についてかい?そりゃ多少の知識はあるよ。僕らだって伊達にスリザリン寮にいるわけじゃないし」
「おまけに、ドラコの家族とは親しい付き合いだしな。知らないわけが無い」
「けれど、真実は自分で見つけろ、と僕の母上はおっしゃったよ。確かに五十年前のことを今ホグワーツで学んでいる僕らが知りすぎているとまた入らぬ疑いを掛けられるから、知らないほうが得策かもしれないな」
「なるほど…一つだけ知っているのは、この前『秘密の部屋』が開かれたときに『穢れた血』が一人死んだ」
「今度も誰か死ぬと思う?」
「分からないけれど、おそらく時間の問題さ。あいつらのうちの誰かが殺される。グレンジャーだといいのに」
「…前に『部屋』を開けたものがつかまったかどうか、知ってる?」
「ああ、ウン……誰だったにせよ、追放された。たぶんまだアズカバンにいるだろう」
……ちがうんだよ……実際は……
「違うんじゃなかったっけ。確かにホグワーツからは追放されたけれど、アズカバンには送られなかったはずだよ。もちろん、今もホグワーツには近づいていないから、前回開けた人がもう一度扉を開いたって言う訳じゃないみたいだけどね」
「実際二人の犯人がいたそうじゃないか」
「それは初耳だな」
「開けたのは一人だろうけれどね」
「へぇ……」
クラッブもゴイルもそろそろ時間が押してきているというのに時計に目もやろうとしない。
おそらく僕らの会話に冷や汗たらたらなんだろう。
ごめんね、スリザリン寮ではこんな会話は日常茶飯事なんだよ。
「…魔法省が先週、僕たちの館を立ち入り検査しただろう?幸いたいしたものは見つからなかったけれど…君たちの家は大丈夫だったのかい?」
「我が家は魔法省との接触を拒んでいるしね。母上が魔法省なんて我が家に入れるはずが無いよ」
「我が家は使用人たちが外部者を排除するからね。大丈夫だった見たいだよ」
「ドラコの家はいろいろと目をつけられることが多いからね、気をつけないと」
「ああ、本当にそうだな……応接間の床下に我が家の『秘密の部屋』があって……」
そのときクラッブがうめいた。
「ほー!!」
その姿を見たら、真っ赤になっていた。
きっともとの姿に戻ろうとしているんだろう。
時間切れだ。
とっさに二人の首根っこをつかんで僕は笑顔で言った。
「なんだか二人とも調子が悪いみたいだから医務室に連れて行くね」
「あ、ああ、頼むよ、」
はふんとそっぽを向いてしまったけど、まぁ仕方ないだろう。
に手伝ってもらって、重い二人の体をずるずると引きずって寮を後にした。
「…ハリー、ロン、無茶なことはするもんじゃないよ。ポリジュース薬なんてほんの一時間しか持たない弱い薬なんだから」
「………気づいてたの……?」
「当たり前じゃないか」
「えっと、その…」
「…報告はしないけど、ルール違反だなぁ。スリザリン寮の談話室の会話を聞くなんて」
「「ごめん…」」
「まぁ、普段はあれよりももっとすごい会話が飛び交ってるけどね……」
僕は笑って、完全に姿の戻った二人とさよならした。
あー、楽しかった。
ハリーたちには悪いけれど、寮に戻った僕は、部屋でと大笑いをしたんだ。
さすがにクラッブとゴイルに化けるなんてばかげてるよ……
そういえば……なにを聞き出したくてこの寮に忍び込んだんだろう…
ポリジュース薬なんか飲んで……
ちょっと疑問だった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ながい……
前半のクリスマスの話は飛ばしてもいいかもしれないな(笑)
此処が書きたかったんで、いろいろすっ飛ばしましたw