日記の中で
リドルの日記の中に取り込まれたのはバレンタインデーの夜。
それからずっと僕はホグワーツ内に姿を現していないわけなんだ。
みんなが僕がいなくなったんじゃないかって疑いをかける頃、が日記の切れ端を通して僕に接触を図ってくれた。
どうやら、が罪のない嘘をついたことによって、僕らの失踪は皆に知られていないみたいだった。
さすが、だね。
で、日記の中の生活が窮屈なものかといったらそうでもなかった。
リドルはたくさんの本を読んでいたから、日記の中も読んだ本の記憶でいっぱいだった。
僕にはまだ知らない本ばかりだったから、毎日その本を読んだり勉強をしたりで、なかなか充実した日々を送ってる。
日記の外に出られればそれこそ一番いいんだけど、今のリドルはそれをしてくれそうになかった。
食事もある、お風呂もある、何不自由ない生活。
でも、外には出られない。
まったく外界から接触することを拒まれたこの空間の中で、毎日リドルと対談をするか、リドルに話しかけてくるジニーの話を聞くか位しか外のことを知ることは出来ないんだ。
そこが少しもどかしいところではあるかな。
『リドル、リドル、いるかしら。私……』
ジニーからの接触があった。
日記の中にいると、どうも面白い。
ジニーが書いた文字が、僕らの前に浮かび上がってくるのだ。
紅茶を飲みながら僕に闇の魔術について語ってくれていたリドルは、あきれたようなため息をつきながら魔法で文字を書き出す。
なるほど、こうやって紙に文字を書いていたんだね……
『ジニー。君の手にもう一度この日記が渡って嬉しいよ。どうして僕を手放したりしたんだい?』
「……ずいぶん紳士的な返事を書くんだね」
「僕がこの記憶になってから既に50年、優等生を演じ続けるのにもそろそろ飽きてきた頃だけどね」
リドルは苦笑していた。
だからといって、ジニーを手荒く扱うつもりはないんだろう。
リドルにとって、外界と接触できる数少ない人間なのだから。
が不満げに低くうなった。
分かってるけど、僕は何もしない。
今ここで、僕も魔法を使ってジニーと接触を図ることは出来るんだ。
でも、そんなことしても意味がないと思う。
それに……僕は傍観者でいるって決めたから。
の体をぎゅっと抱きしめて、僕はジニーとリドルのやり取りを見ている。
『明日は、クィディッチの試合なの。グリフィンドールが優勝杯を手に入れられるかもしれないのよ。ハリーがね、ハリーがシーカーなの。私、ハリーがクィディッチをしているところを見るのがとっても楽しみなのよ』
クィディッチ。
もうそんな時期なんだ。
ここにいると時間の感覚が狂ってしまう。
「クィディッチなんて、本当は興味ないでしょ?」
くすくすと笑いながらそう尋ねてみた。
リドルは苦笑しながら首を縦に振った。
「疲れるんだよ、こんなおばかで間抜けな少女と会話してるなんてね」
一通り会話を終えたリドルは、日記がパタンと閉じられる気配を感じるとまた僕の向かい側の席に腰掛けた。
ジニーのおかげで中断されてしまった闇の魔術について続きを語ってくれるらしい。
リドルの話には興味を惹かれるんだ。
16歳のままの父親の姿。
今の僕と、ほんの少ししか年齢が変わらないのに、どこにそれだけ蓄えるところがあるのか、たくさんのことを知っていた。
最初は父親としてみていたリドルも、今はなんだか年上のお友達のように見えるようになってきた。
とっても尊敬できる人……みたいなね。
「クディッチか」
「…何か気にかかるの?」
「……ちょうどいいと思ってね」
「………協力はしませんからね?」
「…おや、察しがいいね。の協力がなくとも僕が失敗するはずないさ。でも、ついてきてもらうよ」
時々見せる、リドルの不敵な笑みはどこかぞっとする。
それはたぶん、ハリーの笑みよりもずっと黒いからだと思う。
ハリーの黒い微笑みも結構ぞくぞくするんだけどね……
「ジニーを使って、ホグワーツを恐怖に陥れて何が楽しいの?」
「…マグル一掃……だよ、マグル上がりの生徒は好きじゃない」
「…嘘だね。貴方の興味はもう……ハリーに向いているはずだ」
「さすが、の血を引いてるだけあるね」
くすくす笑ったリドルは、僕に近づいてきた。
ぐっと身構える。
こういうときのリドルは危険だ。
も身を構えて僕の前にいる。
「……っ!!」
意識が薄れゆく。
首筋に想いっきり手刀をくらって僕はその場に倒れこんだ。
が支えてくれた。
「ちょっと準備が必要なんだ。君に見てもらってもかまわないんだけど……念には念を……ってね」
そんな声が聞こえた。
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日記の中でのの生活です。
結構充実してます(笑)
勉強は、リドルが教えてくれるので問題ないかと。