入り口


 巨大な盲目の蜘蛛が恐れていたのは、太古の生き物。
 秘密の部屋の中にいる生き物のことは最初から知っていた。
 それは、バジリスク。
 …こんなの、ほんの少し調べれば分かることじゃないか。
 グリフィンドールの生徒たちはそれすら気づかないのか?
 それに、蛇語を話せるのが継承者だとしたら、おのずと怪物の姿は決まってくるだろう?

 だから嫌いなんだ。

 助けようと思えば、蛇語をしゃべれるハリー・ポッターは今すぐにでもを助けることが出来るんだ。
 秘密の部屋の入り口くらい見当ついているだろう?
 全部分かっているのに、僕はその扉を開けることが出来なくてもどかしい。
 だから、扉を開けることの出来る能力を持っているのに、すべてを把握していないやつらに…
 ほんの少し嫉妬してる。
 僕は今すぐにでもを助けたいんだから。






 最初のテストの3日前になって、午前の授業も半ば終わった僕たちは、教師に付き添われて次の授業へと向かうところだった。
 僕は、お昼前にの薬を取りに来るようにとマダム・ポンフリーに言われていたので、ちゃんと許可を取って、マダム・ポンフリーのところへ向かったんだ。
 …別に、誰も飲まない薬なんだけどね。
 は相変わらず気分が悪いってことになっているから、毎日こうやって薬をもらいに行くことは欠かしていない。
 おかげで、僕らの部屋にはたくさんの種類の薬が置かれることになったよ。
 マダム・ポンフリーが次から次へと薬を変えては僕に渡してくるんだから。
 まぁ、ともかく僕はマダム・ポンフリーのところへ行った。

 「ああ、。待っていました。の具合はどうですか?」
 「…普段と変わりないです。もうベッドから起き上がるのも嫌みたいで…顔色も悪くて…」

 こうやって罪のない嘘をつき続けるのも僕は飽きていた。
 ちょっと気を抜いたら、は僕の部屋にはいないんだって、誰かにばらしてしまいそうで…
 僕は一時たりとも気を抜けない生活になってしまっていた。

 「そうですか。では、この薬を持っていっておあげなさい。もしも昼食を口にすることが出来なくても、この薬を水と一緒に飲むようにに伝えてください」

 はい、と短く返事をすると、これ以上この場に用はないから僕はそこを立ち去った。




















 ひょんなことから、マダム・ポンフリーの医務室へ行ってハーマイオニーと会うことになった僕ら。
 ハーマイオニーは手に紙切れをしっかり握り締めていた。
 マダム・ポンフリーに気づかれないようにその紙を取り出すのに苦労したんだ。
 そのとき、マダム・ポンフリーが誰かと話しているのを聞いたんだ。

 「ああ、。待っていました。の具合はどうですか?」

 ……
 その名前を聞いて、僕はあのいまいましい蜘蛛を追いかけていったときのことを思い出しちゃったよ。
 あの時は、なぜか知らないけど僕らのあとをつけてきていたんだ。
 僕らが逃げたとき…はあの場で蜘蛛と話をしていた。
 てっきり食べられちゃったんじゃないかって思って……
 でも、翌日は何事もなかったかのように食事に現れた。
 同様も不思議なやつだって思った。
 ……そういえばは最近どうしているんだろう。
 具合が悪いって事は聞いてるんだけど……

 ハーマイオニーの握っていた紙を見て、ハリーは怪物の正体とかどこに秘密の部屋の入り口があるのか気がついてた。
 職員室に行こうって、ハリーが立ち上がった。
 もう少しで休憩時間だよ、って……
 でも、僕はなんとなくが気になってた。

 「ねぇ。にも話を聞いてみようよ」

 が返事をしてくれないのは承知の上だったけど、医務室を出て行くを追いかけて、階段を降りたところで話しかけた。

 「っ!!」

 振り向いたは、僕らを見てすぐに視線を逸らした。
 分かってるよ。
 君はスリザリンの子としか話をしない。
 きっとの事だって、この襲撃事件の事だって、たくさん知っているんでしょう?
 でも、僕らには一言も教えてなんてくれないんだ。
 僕らは、みんなを助けたいのに。

 「ねぇ、どうしてあの時一緒に森に来たの?」
 「もしかして、ずっと前からこの事件のことについて知ってたんじゃないの?」
 「ねぇ、答えて」

 でもは、ひと言も口を利かずにそのままその場を去ってしまった。
 ハリーが僕に言った。

 「駄目だよ。彼は頑固だからね。それより職員室に行こう」

 僕らは職員室に向かった。




















 次の授業はなんだったろう。
 僕は一人で廊下を歩いていた。
 僕が一人でうろついても、僕が怪物に襲われることはないってなぜか確信していた。
 そのうち僕はなんだか嫌な気配を感じて立ち止まった。
 そこは、三階の女子トイレ前だった。

 最初の事件があった場所。
 すべての始まりの場所。

 誰かが来る気配を感じて、僕は息を潜めてちょうど陰になっているところに隠れたんだ。
 やってきたのはグリフィンドールの一年生。
 赤毛の…ウィーズリー家の娘だった。
 最初の頃からにまとわりついていたやつだったけど……なんて言ったらいいのか…様子が違った。

 目はうつろ。
 まるで何かに操られているかのようにおぼつかない足取りでやってきた。
 そのまま、ローブの中に隠し持っていた紅いペンキを塗りたくって文字を書く。
 明らかに、女の子が書くような文字じゃなかった。
 細長く切れ長なその字は、最初に『秘密の部屋は開かれた』と書かれた文字の下に、まったく同じ筆跡で書かれた……
 そしてそのまま、その子は女子トイレの中に入っていった。



 何で自分でもそんなことをしたのかわからない。
 僕は、彼女のあとをつけていた。
 たぶん、彼女が書いた文字が気になったんだろう。

 『彼女の白骨は永遠に秘密の部屋に横たわるであろう』

 …誰かに操られているって直感したのはこのときだ。
 そのあと僕は、その少女の後についてトイレの中に入った。

 そして、入り口を見つけた。

 少女はそのまま扉を開けて入っていった。
 少し戸惑ったけど、僕もその後に続いた。
 扉が閉じる前に僕はあとをつけてごつごつとした道を進んでいったんだ。

 なんとなく、に会えるかもしれない……そんな風に思ったんだ。






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 入り口みーつけた。
 に会いたい一心でジニーのあとをつけていきます。
 この先どうなっちゃうんだろう。
 そろそろクライマックスっ!!