再会
誰かに操られたグリフィンドールの少女を追って、僕は秘密の部屋に足を踏み入れた。
ヘビの像がところどころに置かれた薄気味悪いこの空間で、一歩一歩慎重に進んでいった。
「僕のあとをつけてくるなんて……」
聞いたことのあるようで聞いたことのない声が聞こえてきた。
「っ……」
次の瞬間にはもう、僕の体はロープでぐるぐるに縛られていた。
「その勇気には敬意を払いたいけどね……」
顔の見えない相手はそういった。
誰だ…って叫びたかったけど、それをする前に聞き覚えのある懐かしい声がしたので僕は何もしなかった。
「っ?!」
動けない僕のもとに走ってきたのは、本当に久しぶりに見る親友の姿であった。
「……」
「どうしてここにいるの?」
「赤毛のウィーズリー家の子を追いかけてきたんだ。僕だってまさか君がこんなところにいるとは思わなかった」
「そっか……ちょっと待って、解いてあげるから」
は僕の縄を解いてくれた。
少してこずっていたけれど、するすると縄は解け、僕はまた自由になった。
「…心配したんだ、」
両手が自由になったんで、をぎゅっと抱きしめた。
は一瞬戸惑った表情をしたけど、そのあといつものように優しい笑顔で抱きしめ返してくれた。
数ヶ月ぶりに友と再会した瞬間だった。
のペットのもそこにいて、二人とも元気そうだった。
は少し痩せたみたいだったけど。
「ふふふっ……なんか、リドル以外の人間のぬくもりって久しぶり」
はそういった。
「リドル……?」
「あ、うん……あの日記の主だよ」
一通り抱擁が終わると、は僕の手を引いて部屋の奥のほうまで連れて行ってくれた。
も嬉しそうについてくる。
ああ、友達ってやっぱり身近にいないと寂しいものなんだな……
実感したよ。
「誰だい、その子…」
「僕の友達だよ。僕の友達をいきなり縛るなんて…リドルって本当に容赦ないんだから」
が秘密の部屋の中に入ってくるなんて思ってもいなかった僕は、しばらくとお互いを確かめ合っていた。
僕にしてみれば、本当に久しぶりの、リドル以外の他人のぬくもりだった。
日記の中では何不自由しなかったけれど、外界から隔離された世界は僕にとって辛いものでもあった。
やっと、秘密の部屋の中でとはいえ、と再会した僕は、笑顔がこぼれるのを抑えきれなかったよ。
僕は今日、秘密の部屋の中に連れて行かれたんだ。
そろそろだよって言われて。
ジニーに乗り移ったリドルはジニーを操って、この部屋の中までやってきて、ジニーの魔力をほとんどぎりぎりまで吸い取った。
そのせいで、ジニーは今そこに横たわってる。
心臓は動いているけどかなりゆっくりだし手も冷たい。
助けたいけど僕はどうしたらいいか分からない。
そんな風に思っていたら、リドルが誰かを捕まえたって言うから……
もしかしたらハリーかもしれないって思って駆け寄ってみた。
それがだなんて本当に思わなかったよ。
を部屋の奥に連れて行ってリドルにあわせた。
はしばらく僕とリドルの顔を見比べていた。
「…そっくりだな」
「そりゃ、まぁ」
リドルはをじっと見つめて、やれやれとため息をついた。
「だめだよ、リドル。は僕の一番の親友なんだ。に何かしたら駄目だよ」
「…いいよ、手を下す気はない。ハリー・ポッターが現れるまで好きにしているがいいさ」
リドルは少し冷たく言った。
もしかしたら前回のことを思い出したのかもしれないなぁって僕は思った。
ハーマイオニーのとき…僕は幼子にかえったくらいに駄々をこねてリドルを困らせてしまった。
だから、今度もそうなることをリドルは嫌ったのかもしれないな。
「まさか、あんなところに秘密の部屋への入り口があるとは思わなかったよ」
「僕も最初は疑ってたよ。リドルに連れられてここに来たとき、はじめてわかったからね」
しばらく僕たちは再会の喜びに浸りながら、秘密の部屋の中を探検した。
サラザール・スリザリンが作っただけあって、僕らスリザリン生の興味をそそるものばかりだった。
でも、それはほんのつかの間のうれしい再会だった。
そのうちリドルは僕を呼んだ。
「…誰かが入り口を開けた。そろそろやってくるよ」
「協力はしないよ?」
「どうせ協力することになるんだ。今の内から覚悟を決めておいたほうがいいと思うけど」
「ハリーは僕の友達だ。僕はあくまで傍観者になるって…言ったよね」
「闇の帝王の後継者に、友達は必要ない」
リドルはもう何度も聴かされているその言葉を繰り返した。
僕だって、分かってるよ。
いずれ僕にも決断しなくてはならないときが来るんだ。
リドルが、ずっと幼い頃に決断したときのように。
でも、それって今じゃない。
僕はあくまで傍観者でいるって決めたんだから、ここで見ていることにするよ。
「………もういいよ。君が自分の考えを変えないのは僕が良く知っている。何しろ僕と君はそっくりだ」
「そりゃ、そうだよ」
「でも、本当に傍観者になるんだったら、しばらくの間僕の魔法にかかっててもらうよ。いつ何時君の魔力が爆発してしまうかしれないんだからね。君の友達にも同じ魔法をかけるよ。いいね?」
「……」
「心配ない。体には影響ないから。ただ…しばらくの間、声を奪うから。それと、君たちの周りに結界を張るよ。それ以上ほかの人が近づけないようにね。正真正銘の傍観者になるんだ」
チラッとを見たら、頷いてくれたから、僕もいいよって返事をした。
僕らは、秘密の部屋の一角に二人で捕らわれることになった。
リドルが魔法をかけると、僕たちは声を失った。
会話は出来るのに、音がないんだよね。
僕とは思考回路内で会話が出来るし、リドルが話しかけてくる言葉も分かるのに、僕の声が、僕の音が出ない。
きっと、ハリーに入れ知恵をしないためにリドルは言葉を奪ったんだろうって思って苦笑したよ。
それから、秘密の部屋の一角に捕らわれた。
それ以上は外に踏み出せない空間に僕らは二人でいる。
が心配そうに僕の元から離れようとしなかった。
それで、僕はを優しくなでながら、これからのことをじっと見つめることにしたんだ。
僕の予想が正しければ……
いや、この先は考えないことにしよう。
運命は、変えられるんだから。
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クライマックス迫る?!(笑)
やっと再会。
久しぶりに登場ですね。
んで、これからが大変かもしれない。