ため息


 リドルが消えた。
 そのあと、俺たちが何をしていたのかあまりちゃんと記憶していないんだ。
 ジニーが泣きながらハリーに連れられて秘密の部屋を出て、俺たちもその後に続いた…んだと思う。

 俺もを支えて歩くのに必死で、周りなんか見ていなかったんだ。
 は、なんだか疲れた表情でぼーっと一点を見つめていた。
 目から涙があふれていたけど、ぬぐうこともせずにじっとして動かなかった。
 が、に何か囁くと、瞬きをしたあとに立ち上がったけれど、ふらついてて危なかった。
 を支え、俺がを支え、そんなこんなで部屋から出た。

 そのあとは、確か狭い通路を……ハリーたちがどうやって出たのかは知らないけど、俺がを背に乗せてもと来た道を戻っていったんだ。
 通路を抜けると、ハリーたちが不死鳥を追いかけていくものだから、俺たちもそれに続いた。
 はずっとうつむいて歩いていた。











 そして、マクゴガナル教授の部屋で、俺達はどろどろのままハリーの話を聞いた。
 教授に呼ばれていたんだろう、ウィーズリー夫妻はジニーを抱きしめていた。
 ハリーはずっと自分がバジリスクを見つけ、倒すまでの話をした。
 もちろん、ジニーのことには触れずに…だ。

 その間ずっと、はうつむいたままだった。
 の体を気遣いながらその場にいて何も言わなかった。
 俺は、の足元に寝そべっているだけだった。

 「わしが、一番興味があるのは……」

 ハリーの話が途中で詰まると、ダンブルドアが優しく言った。

 「ヴォルデモート卿が、どうやってジニーに魔法をかけたかということじゃ。わしの個人的情報によれば、ヴォルデモートは現在アルバニアの森に隠れているらしいが……」

 この言葉にはウィーズリー氏も驚いたようで、声が上ずりながらダンブルドアに質問を投げかける。

 「例のあの人が?ジニーに、ま、魔法をかけたと?でも、ジニーはそんな……ジニーはこれまでそんな……本当に?」
 「…この日記だったんです」

 ハリーが急いでそういうと、日記を取り上げ、ダンブルドアに見せた。
 日記がハリーの手元からダンブルドアのところに動いたとき、が初めて顔を上げた。
 そして、日記の行方を追った。
 でも、すぐにまたうつむいてしまった。
 う〜ん…は何を考えているんだろう……

 「…ヴォルデモート卿が、かつてトム・リドルと呼ばれていたことをしるものは、ほとんどいない」

 ダンブルドアが悲しげにそういった。

 「トムは卒業後姿を消した。世界中を旅し、闇の魔術にどっぷりとつかりこみ……ヴォルデモート卿としてこの世に再び姿を現したとき、かつて、ホグワーツで首席だった優秀で模範的な少年の面影はどこにも見当たらなかった」

 それから、ダンブルドアはジニーに優しく言葉をかけ、ウィーズリー夫妻と共に医務室に送った。
 夫妻は困惑していたけれど、ジニーと一緒にいることを望み、医務室に行った。
 そして、マクゴガナル教授は、ダンブルドアに頼まれて祝宴の準備をするためにこの場を去った。

 ハリーとロンには『ホグワーツ特別功労賞』が授与されることになり、ひとり200点ずつ加点されることになった。
 ロンもハリーも大喜びだ。
 そして、記憶を失ったロックハートを連れて、ロンは医務室へ向かった。

 部屋に残ったのは、ハリーと。それに俺だった。

 ハリーとダンブルドアが何か話していたけど、俺はまったく聞いていなかった。
 だって、が泣き出したんだ。
 ぽろぽろ涙をこぼして。
 だから、俺とを支えることに集中していた。
 ハリーがダンブルドアと何をしゃべったのかなんて、まったく聞いてなかったよ。

 そしたら、ハリーも祝宴に参加することになって部屋を出て行ったんだ。
 残されたのは、俺と








 「…貴重な経験をしたの」

 しばらく沈黙が続いて、それからダンブルドアがそういった。
 おそらくに向けて。

 「16歳のときの自分の父親と…数ヶ月間も共に過ごしたなんてのう」

 きらっと光る瞳。
 ダンブルドアはすべてをお見通しだったみたいだ。

 「…先生…」

 が涙を拭きながら言った。
 がそっとを支えていた。

 マルフォイの父親が入ってきたのはそのときだった。
 なにやらダンブルドアと言い合いをしたあと、屋敷僕妖精を連れて出て行った。
 せっかくが何か言おうとしたのに、まったくやなやつだ。

 「さて、。続けなさい」
 「………先生、その日記を僕にください」
 「これをかの?」
 「はい」

 ダンブルドアはしばらく考えてから、どろどろでよれよれになり、穴の開いたその日記をに渡した。
 にっこりと微笑んで。

 「……」
 「…先生。ヴォルデモート卿は…どうして闇にはまったのかご存知ですか?」

 ダンブルドアはうんともすんとも言わなかった。

 「彼と生活して…尤も、16歳のときのですけれど…僕はそれがわかったような気がするんです。だから、ハリーを助けることも、彼に協力することもどうしても出来なかった」

 いいんじゃよ、とダンブルドアは言った。

 「そのとき自分がした選択が自分を決めるのじゃ。がした選択で、は自分を決めた。それでいいんじゃよ」

 それからダンブルドアは、を寮に連れて行くよう指示し、はその指示に従った。














 部屋のベッドはふかふかしていた。






〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
 ちょっとごちゃごちゃしたところをまとめてみました。
 次で秘密の部屋終わり。
 そして、ちょっと癖のある夏休みへ(笑)