予期せぬこと
ここ、どこ……
目覚めてあたりを見渡した僕の口から流れて出た言葉はこれだった。
夏休みに入って数週間。
宿題も終わらせ、毎日やハーマイオニーたちとの手紙のやり取りをして……
ちょっとした事でであった、日記リドルにいろんなことを教えてもらって……
そして昨日はベッドに入ったはずだったんだ。
そのときはまだ、僕の家の僕のベッドだった。
それなのに、ここはどこだ?
杖がある。
ローブがある。
首からぶら下げられるようにサイズを変え改良したリドルの日記もある。
もいる。
でも、僕のベッドはない。
僕の部屋の天井もない。
僕が今いるのは……緑色の草が生い茂った場所。
上を見上げると、それはそれは綺麗に星が瞬いてる。
どういうことなんだろう。
腕を組んでうーんと唸りながら考えてみたけれど、こんな場所に飛ばされるようなことをした覚えはなかった。
夢のお告げでもこんなことが起きるなんて予兆はなかったし、水晶玉にもこんなことが起こるなんて出ていなかった。
「…………」
声が聞こえる。
リドルが、日記からすぅっと現れた。
「やあ、リドル」
「ここはどこだい?」
「僕にもよくわからないんだ」
にっこり笑うと、リドルは綺麗な手で顔を覆ってため息をついた。
も起き上がった。
夏だからかもしれないが、夜に外にいても寒いとは感じなかった。
ただ……ここがどこだか分からなくて、僕たちは混乱していた。
「、君は夢遊病にでもなったのかい?」
「そんなことないよ?」
リドルのため息をかわして、僕は杖を取り出した。
「Lumos!」
杖の先に光を灯して、あたりをじっと見つめる。
広い広い空間に、緑色の芝生がずーーっとひかれている。
上のほうを見ると…観客席だろうか。たくさんの人を収容できる場所がある。
あっ!
「ここは、ホグワーツだ」
なんだ、と僕はため息をついて苦笑した。
きっと、何かの手違いで誰かが僕をホグワーツまで運んでしまったんだ。
夏休みとはいえ、誰か先生がいるだろうし、そうでなくてもホグワーツの屋敷僕妖精がいるだろうから大丈夫だろう。
立ち上がって、杖の先の光を頼りに僕たちは歩き出した。
が心配そうに僕の足に絡み付いてきたので、僕は優しくなでてあげた。
すると、安心したようにごろごろとのどを鳴らした。
「だれだっ!」
しばらくホグワーツの中を探検したときだった。
僕としては、校長室に駆け込みたかったんだけど、ホグワーツはところどころ雰囲気が違って、いつも知っているはずの道を僕たちは間違えてしまっていたようだ。
とある廊下で、僕たちはそんな声を聞いて立ち止まった。
とたんに、廊下全体が明るく照らされる。
目の前には、長い黒髪を後ろで縛った紅い瞳の青年がいた。
背が高く、黒い衣装を見にまとっていて、僕に向けて杖を構えていた。
だれだ、この人。
リドルのほうをチラッと見たけれど、リドルは自分にも分からないという風に首を横に振った。
「ホグワーツに侵入するなんていい度胸だな」
相手は冷たくそういった。
今にも僕たちに向かって魔法をかけてきそうな勢いだ。
こんな人、知らない。
おまけに、黒髪に紅い瞳なんて、僕とリドル以外にあったことないよ?
この人は…誰?
「待って」
不意に僕の口から出てきた言葉。
「……ここ、ホグワーツだよね?ダンブルドア校長はどこにいます?あなたは誰?管理人ですか?ホグワーツは何か改装工事でもしてるの?とりあえず、僕は校長に会わなくちゃならないんだけど……」
相手は首をかしげて僕をじっと見た。
自分が何を言っているのか、混乱していてよくわからなかった。
「誰だ、お前は」
名乗ったほうがいいのだろうか。
よくわからない。
「……。・」
とりあえず名乗る。
相手はさして驚いた風もなく僕をじっと見つめた。
舐めるように全身を細かく観察するその紅い瞳は、リドルがハリーを見つめていたときと同じだなと想う。
「貴方は誰?」
僕が問う。
相手は僕に対する警戒を解かないままだが名乗ってくれた。
「サラザール・スリザリン」
ごふっ
名前を聞いた途端に、僕の隣にいたリドルが鼻血を出して倒れた。
これには僕も相手も驚いて、互いに向けていた杖を取り落としそうになったよ。
「ちょっ…リドル?!大丈夫?」
倒れたりドルを助け起こすと、リドルは鼻を押さえながら起き上がって僕に囁いた。
それを聞いた僕は、相手に気づかれないように頷いてもう一度立ち上がった。
「私をサラザールと知っていて、ここがホグワーツであることを知っていて侵入してくるとはいい度胸だな」
相手はそういった。
ちょっと待ってよ。
僕たち、戦う気なんてさらさらないし、進入しようと思ってしたわけじゃないんだよ。
でも……
僕たちが、遠くから飛ばされてきたなんてここで言えるはずもないじゃないか。
言ったって信じてもらえるはずがない。
どうしたらいいんだ?
……混乱して何もいえなかったら、いつの間に鼻血が止まったのか、リドルが平然として立ち上がって相手に言った。
「両親に捨てられてね。行き場がなくてさまよってたら、ここに出た。建物があったから中で休みたいと想ったんだ」
ぱちっと僕に向けてウインクする。
僕もこの嘘を突き通すことにした。
「何故、親に捨てられた?子を捨てる親など……」
「魔法使いだからさ」
リドルが言った。
「この世の中、自分の子どもが魔法使いであることを喜ぶ親なんて少ないからね。僕たちは、魔法の力が目覚めたと同時に捨てられた。もうずっと彷徨い歩いてきたんだ」
相手が杖をおろした。
ついて来い、と、小さく言う。
僕たちは相手を見失わないように、でも、一定の距離を置いてついていった。
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不思議な夏休み編突入。
いわずと知れた創設者?
アズカバンに入る前に、が知らなくてはならないことがあります。
ということで、ほんの少しの間、鳴瀬の考える創設者たちにお付き合いくださいませ。