昼下がりには


 「…どうして、来ちゃダメって言ったのに来たの?」
 「それはだな、うん。ハリーの雄姿をどうしても見たくて、だな」
 「そのせいでハリーが箒から落ちたんだよ?」
 「なっ?!」

 陽気な午後の昼下がり。
 はそっと禁じられた森に入っていった。
 目的は、シリウス・ブラックに会うこと。
 ハリーはしばらく安静にしてなくてはいけないってマダム・ポンフリーが言っていた。
 ハリーがクィディッチの試合で箒から落ちたことは、ホグワーツで一番有名かもしれない。
 そのときハリーを間接的に助けたのがなんだけれども、は目撃したらしい。黒い大きな犬を。
 ハリーもその日以来なんだか妙に落ち着かない。


 そこで、これだ。
 は俺を従えて禁じられた森にやってきた。
 禁じられた森にはシリウス・ブラックがいる。
 俺達は今、倒れた木に腰掛けて、シリウス・ブラックと対話している。
 勿論俺は、のひざの上に乗ってくつろいでいるわけだ。
 が時折俺の体を触ってくれるけれどそれがとっても気持ちよくて、このぽかぽか陽気の中で大きなあくびが何度も出てきた。

 「ハリーったら怪我はなかったけど、君の事におびえているみたいなんだから」
 「…うう。ごめん」
 「あんまり軽率な行動はしないほうがいいよ。見つかりたくないでしょう?」
 「もちろん」
 「そのうち、ちゃんとハリーと話ができる日が来るから、ちょっと待ってなよ。それくらい我慢できるでしょ?」

 しゅんとうなだれたシリウス・ブラックに、が笑顔でそういう。
 シリウス・ブラックは、アズカバンから抜け出してくるほどの力があるにもかかわらず、どこか抜けているなぁと俺は思う。
 時々感情に任せて考えなしに行動してしまうみたいだ。
 はさて、といって立ち上がった。

 「次は、気をつけてね」
 「…ごめんよ」

 シリウス・ブラックに背を向けて颯爽と歩いていく
 急いで俺もの後をつけていく。












 午後の授業がない陽気な昼下がり。
 今日のには用事がある。
 禁じられた森を抜けて、中庭にたどりつくと、そこにいた。

 「っ!!」
 「ごめんね、待った?」
 「ちょっとだけ、ね。でも、と一緒にお昼が食べられるならそれでいいんだ」

 ロンは満面の笑みでのほうに駆け寄ってきた。
 ちゃんと2人分の食事がそこに用意してある。
 芝生の上に腰を下ろすと、二人並んで食事を始める。
 あの日以来、ロンは積極的にに話しかけてくるようになった。
 勿論それは、俺やにとっては迷惑な話なんだ。
 ロンがと一緒にいる時間だけ、俺がと一緒にいる時間が、と一緒にいる時間が減るわけなんだから。
 それでも、がロンをあしらうはずもないわけで、俺達はちょっと損をしている気がする。
 だから、俺の顔はロンにあうといつも鋭くなる。

 「…っていつも怒ってるよね…」
 「そうかな?」

 が俺の顔を覗き込んだ。
 紅い瞳がじっと俺を見つめて、にっこりと微笑んだ。
 俺もの目をじっと見つめる。

 「別に、怒ってるわけじゃないと思うよ。とっても優しい目をしてるもの」

 ぽんぽんと軽く背を叩きながらそういわれた。
 ほんの少しだけ嬉しかった。

 「それでね、。前回の試合はあんなに天気が悪くて、おまけにハリーにハプニングがあったからグリフィンドールの成績は良くなかったけど…でも、絶対グリフィンドールが今年優勝すると思うんだっ!今年はとっても調子がいいからね」

 クィディッチの話をするロンは笑顔だ。
 クィディッチにはまったく興味のないだけれども、ロンの話を笑顔で聞く。

 「それからね……」

 「何してるのかなぁ、ロン

 ロンが次の言葉を話しだしたときに、すぐ後ろから声がした。
 振り向くとハリーとハーマイオニーが満面の黒い笑みを浮かべてそこに立っていた。

 「僕のと二人で食事なんて、誰に許可取ったんだい?」
 「あら、ハリー。私のよ?抜け駆けはずるいわよ、ロン」

 ハリーがとロンの間に強引に割り込んできて、ハーマイオニーがの隣に座る。
 ハリーとハーマイオニーがいきなり現れたことに驚いたロンは、さっきまでの笑顔はどこへやら、冷や汗をかいているみたいだ。
 表情も固い。

 「だいたいねぇ、僕が医務室に泊まったからって、抜け駆けはずるいんだよ。ロンがいないから探しちゃったじゃないか。おまけにもスリザリンの席にいないし」
 「ごめんね。ロンに誘われたから、今日は中庭でご飯を食べようと思ってね。こんなにぽかぽかした陽気だと、外に出てみたくなると思わない?」
 「のせいじゃないのよ」

 そんな会話が続く。
 がそっと俺につぶやく。
 …また誰か来たよ、と。
 そのとおり、静かな足音が迫っていた。
 ここで俺が振り向けば、をはじめとするそのほかのメンバーも振り向くんだろうけれど、それをしては楽しくないだろう。だからあえて振り向かないことにした。
 その人物はゆっくりとやってくると、いきなりの首根っこを掴んで引きずり出した。

 「やぁ、
 「…食事が冷める。今日の午後は図書室で勉強会の約束だろう?探したじゃないか」
 「ちょっと、私たちがとおしゃべりしてたのよっ!」

 はチラッとハーマイオニーのほうを見てから、ふんっと鼻を鳴らしてそっぽを向いた。
 は苦笑しながら立ち上がると、トレーに乗せた食事をそのまま持ってに引きずられていく。

 「えぇ、。今日はこれでおしまい?」
 「ごめんね。また今度おしゃべりしようね」

 ニコニコと残された三人に手を振ると、と並んで歩いていく。
 その後ろを俺がてけてけてとついていけば、いつの間に現れたのか、のローブからニトが這い出してきて俺の背中に乗った。

 俺たちの休み時間は、こうして過ぎていく。


 「…ロンのせいだからね」
 「え、僕?」
 「当たり前じゃない。ロンが抜け駆けさえしなかったら、今頃と熱いトークをかわせていたのにっ!」
 「…ほんと、ロンって……」

 そんな会話が後ろのほうから聞こえていた。






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 ちょっと番外チックに。
 中庭でお話っていいなぁ(笑)