最初の授業
初日の授業一番はじめは、最上級生……私のひとつ下の後輩たちの授業だった。
占い学は選択授業だから、すべての寮の生徒が混同している。
きぃっと扉が開いて、最初の生徒たちが入ってきた。
雰囲気が変わって、すっきりしてしまった部屋で少し戸惑っているみたい。
すっ、と部屋の奥から姿をあらわすと、とたんにざわめいていた部屋が静かになる。
でも、生徒たちはみんな立ったまま。
「…あら皆様、どうぞお席にお座りになりまして」
席を勧めると、戸惑いつつもきっちりと寮別に分かれて綺麗に私の用意した丸いテーブルと対になっている椅子に腰掛けた。
「…さて、まずは占い学について少しお話しましょうか」
「ついこの間まで授業を受けていた人が学問について語るなんておかしいわね」
…最初から、生徒に文句を言われたわ。
あれは…グリフィンドールの女子生徒ね。
ああ、彼女は前の教師をとても崇拝していたものね…
確かに、ひとつしか年齢が違わない私の授業なんて受けられないのかもしれないわ。
「そうね。でも、まずは私の話を少し聞いてくださいね」
納得のいかない表情をしている生徒たちに作り笑顔を向けて、肩にかけていた黒いショールをかけなおしながら私は背もたれの高いゆったりとした椅子に腰掛けた。
「…今までどんな風に授業を受けてきたのかしら。…私の占いは、今までの授業とは少し違うでしょう。今までは、水晶玉を覗いたりお茶の葉から未来を読み取ったりしていましたけど…予言されたことを本と照らし合わせて直接答えを出していたでしょう」
でも……と、私は話を続ける。
この時点ではまだ私に対して懐疑心を持っている生徒が大半だった。
それも、私と同じスリザリン寮の人達は私を信頼しているのに対して、ほかの寮の人達はとても私のことを疑っているようだった。
「…でもね。本当の占いは心で見たり聞いたりするもので、決して本に書いてあることがすべてではないわ」
ほんの少し教室の中がざわめく。
でも私はただただ話を続ける。
「私は、教科書を使わない授業を一年間していくつもりなの。個人個人の心の目や耳で感じたことを自分自身で受け止めてもらいたいから。感じたことも、直接的に言葉で表せるものではないはずよ。予言はいつも、抽象的な言葉で現れるの」
しーんと部屋の中が静まった。
初めてでは、この話は少し衝撃があるかしら。
生徒たちの心のざわめきが無くなるのを待ってから、私はもう一度口を開いた。
「さて、最初の授業を始めましょうか。新学期一番始めの授業は水晶玉を見ましょう」
杖を振って、ひとりにひとつ水晶玉が行き渡るようにする。
また、さっきの少女が生意気に手を上げた。
「どうぞ、そこのあなた」
「それならどうして教科書を私たちに買わせたんですか?必要ないのに……」
「…教科書は、授業以外の宿題などであなたがたの役に立つでしょう。ほかに質問はありませんか?でしたら、早速始めましょう」
いまだに懐疑心を持った生徒たちを相手に授業をするのは大変だけれども、最初の授業だもの、これくらいよね。
「杖を取り出して。意識を集中させて…そうね。最初は近い未来にどこかで起こることを占ってみましょう」
簡単に説明をすると、独り独りが集中できるような空間を作ってあげる。
どんな生徒だろうと、どんなに気に入らない生徒だろうと、私はまだ優等生を演じているのね。
「…何も見えないわ」
「僕も」
「目で見ようとするから見えないのよ。目を閉じて御覧なさい?本来ならこれでも見えるはずよ。でも、最初ですもの、あせらずに参りましょうね」
生徒に疑われないよう優しく…ね。
最初の授業は何とか成功といえるようだった。
その日の夜、私は手紙を書いた。
Dear 愛しい人
今はどこにいらっしゃるのでしょう。
ホグワーツは相変わらずの新学期です。
いつもと変わらない生活…といっても、私の部屋がいつもの隠し部屋ではなく北塔に移りました。
あなたは今どこにいるのでしょう。
ふくろうにあなたの場所まで飛んでもらうように伝えてあるけれど、いつこの手紙があなたの元に届くのか心配です。
最初の授業はやや問題もありましたが成功でした。
私はまだ、ダンブルドアを始めいろんな教師や生徒に見られている立場にあるので、最初のうちは怪しい行動は控えることにしました。
少しでも早くあなたと再会したいという想いもありますが、あなたの研究に少しでもお役に立てればと思っています。
…すぐに学生時代を思い出してしまうのは、私がまだあなたが隣いないことを寂しいと思ってしまうからでしょうか。
FROM ・
この手紙が、彼に届くころ、私は何をしているのかしら。
一年に一度会えるかどうかわからない関係にあるってことはわかっているのに、なんだか寂しいわ。
北塔から、星を眺めてそんな風にあなたに想いを馳せています。
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はリドルに惹かれています。
最初に出会ったころよりもずっと。
会えないからこそ、その想いは募るのです。