突然の再会
やっと各学年の授業にも慣れてきて、教職について一年目のハロウィーン。
生徒の時から参加するのがあまり好きではなかったけれど、教師になってしまうと参加しないわけにもいかなくて。
特に、スリザリン寮の寮監になってしまったわけだからこの場所に出ないわけにはいかないの。
ハロウィーンの宴は毎年同じでにぎやかだった。
初めてハロウィーンの宴を体験する一年生たちは驚いていたけれど、それでもにぎやかに過ごしているようだった。
その日の夜、疲れた私の机に黒い封筒がひとつ置いてあった。
差出人の名前は書いていない。
黒い封筒を使う人間なんて…思い浮かぶのは彼くらい。
今まで何度手紙を出しても返事がこなかっただけに少し心が騒いだわ。
慎重にゆっくりと封を開けていく。
中には見慣れた文字で、メモ書きのように一行だけ文字が書いてあった。
『今夜、星の見える塔で』
チラッと時計を見たら、零時を回るところだった。
ふっ、と風が頬をなでたものだから、驚いて振り返った。
しっかり閉じていたはずの窓がほんの少しだけ開いている。
開いた窓から風が入り込んで、少し肌寒い。
風のいたずらだとおもって窓をもう一度閉める。
それから手紙をもう一度読んでみようと椅子に座ろうとする……
そうして振り向いた瞬間だったわ。
部屋の中に黒いマントを深くかぶった人物が立っている。
「…ヴォル…?」
何も言わずに彼は私を抱きしめた。
「…久しぶりね。あなたから会いにくるなんて珍しいわね。いくら手紙を出しても返事がこなかったら心配していたのよ」
「……会いたかったから」
「いくらなんでもハロウィーンの夜にやってくるなんて…」
「宴の時が一番ホグワーツは手薄だからね」
「…やっぱりあなたね」
夏休みからずっと会っていなかったものだから、久しぶりのリドルのぬくもりに私は酔いしれた。
「…少し見た目が変わったのね」
「いろんな文献を調べていたら、サラザールの昔の衣装のかかれた文献があってね。それを参考にしてみたんだ」
「素敵よ」
ふふふ、と微笑んで彼と向かい合う。
リドルは優しく私を抱きしめて離さない。
「…君も、少し変わったね」
「私服を着ているからかしら」
「大人っぽくなった」
「ホグワーツの教職員の一人になったんですもの。生徒と同じような格好では……ね。ありがとう」
にっこりと微笑むと彼もいつものような笑顔を見せてくれた。
私は彼の笑顔が好きなのね。
紅い瞳に見つめられるだけで体が火照っていく。
「…ねぇ、。僕は君に話があるんだ」
「何かしら。大切なお話?」
「ああ。僕が世界を見て回ったら…僕が、闇の帝王になるにふさわしい魔力を手に入れたら…僕と一緒に住んでくれないかい?」
「あら……ずいぶん突然なのね」
「君は突然に訪れることが好きだろう?」
私のことを全部知っているリドルは私の心を巧みに惹きつける。
「…それで、一緒に住んで、どうするの?」
「素敵な家を用意したんだ。イギリスの郊外に…人目を避けるようにしてある小高い丘の上にね。綺麗な家を用意したんだ。君も気に入ってくれると思う。夏休みになったら是非足を運んでみて」
「いつも突然なのね。あなたって」
にっこりしながらリドルの腰に手をまわす。
「君がここにいると、僕はなかなか会いにこれなくてね。君の手紙を見て、返事をして君が疑われてもなんだか…ね」
「私のことを考えていてくれたのね……」
「もちろんだよ、僕のお姫様」
「本当に変わってないのね。ありがとう」
くすくす笑うと、リドルはほんの少し私のことを強く抱きしめる。
「…外に行かないかい?君の好きな星が綺麗に輝いているよ」
「先生方に見つからないようになら」
リドルは私を外に連れ出した。
甘いひとときはあまりに短く感じた。
久しぶりに感じるリドルのぬくもりは温かかった。
教師生活やってきて、一番息抜きができたのは今日だったかもしれないわ。
次は夏休みに会うことを約束して、彼は静かに私の元を去った。
次の休みまで、私はがんばろうと意志を固めて眠りにつくことにしたの。
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毎年夏休みとハロウィーンはリドルと会える日なのです。