思いを馳せる
最初にホグワーツの教員を始めた日から…一体何年経ったのでしょう。
私はふと、もう何年も教鞭をとっている北塔の部屋を見渡しながらそんなことを考えていた。
愛用している背もたれの高い椅子に、私は何年座りつづけてきたのでしょう。
私のひざには、黒い毛の色で足の色だけが白い、若い猫が一匹優雅に座っている。
水晶玉の向こう側には、年老いたとルデの姿。
いくら魔法界の動物が人間界の動物に比べて長生きだからと言っても、すべての生物には寿命と言うものが存在する。
最初に体の不調を訴え始めたのはルデのほうだった。
最近のルデは歩くこともままならない様子で、日長一日、水晶玉の向こう側に準備したクッションの上に座っている。
は常にルデに寄り添い、食事のときでさえ傍を離れようとしないの。
そんなは、ルデの子供を五匹生んだわ。
でも、乳離れをした直後に、とルデの愛は、私のひざの上に乗っているこの一匹の猫に注がれた。
それ以外の猫には見切りをつけたようになって相手にもしなかったわ。
…恐らく、その四匹が魔力を持たない猫であることに気がついていたのね。
しばらくして私は四匹の猫をペットのいない生徒にやってしまったの。
も育てる気は無いようでしたし、なにより、ひざの上に乗っているこの猫が、残りの猫を毛嫌いしていたものですから。
今日何度目かのため息をつきながら、私は猫の体を優しく撫でた。
毎年ハロウィーンに彼から手紙がある。
毎年夏休みには何処かで彼に会える。
それでも私は、一年のほとんどを一人で過ごしている…
寂しくもなるわね。
教員になってから今まで……変わったことと言えば…そうね。
とルデの命が後残りわずかだと言うこと。
それから……私は一人子供を産んだわ。
今は…屋敷の奥で時を止めているの。
来る日まで…と彼は言っていた。
私も彼も20歳の姿のままで生活をしてきているの。
外見も変わらない。
変わっていくのは生徒たちだけ。
私は何人の生徒を見送ったのかしら。
今年もまた、スリザリンの寮監。
ああ、そう言えば変わったことがもうひとつあったわ。
ダンブルドアが校長職についたってことね。
ますます私にはこの場所が居づらい場所になってしまったわ。
仕方ないのですけれど。
さて…次の授業が始まるわね。
冷めてしまった大しておいしくも無いコーヒーを飲み干すと、私はショールを肩にかけて立ち上がる。
眠っていた猫が私のひざから飛び降りて、とルデの傍による。
三匹がゆっくり眠る部屋を後にして、いつものように私は仕事に行く。
いつもと変わらない日々。
変わらない日々に私は退屈していた。
今年のグリフィンドールの一年生にはとても騒がしい生徒たちが入ったと聞いていたけれど…
私が出会うわけも無く。
きっと今年も私の授業は変わらないでしょう。
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親世代編へ入る前の序章とでも言いましょうか。
次から、はっちゃけた彼らの登場です。