選択


 「なぁ、ジェームズ」

 「なんだい?」

 名前を呼ばれて、来年選択する授業を選んでいたくせっ毛の少年が顔を上げた。

 「占い学と、数占い学、どっちを取る?」

 「なんだ、そんなことで悩んでたのかい?」

 「結構重要だと思うぞ。数占い学は理論が通っているがめんどくさいと言われてる。占い学は…能力のない奴には出来ないんだろう?」

 「君がそんなことで悩んでるなんて、珍しいね」

 横から口を挟んだのは、甘そうなクッキーの上にさらに粉砂糖をたくさんかけて頬張っている少年だった。

 「数占いと占いだったら、どっちを取るかなんて、目に見えているじゃないか!」

 勝ち誇ったように言うジェームズを見て、シリウスは首をかしげた。

 「あの先生の授業受けられるんだっ!毎回毎回ことごとく悪戯に失敗しては、僕らを北塔から追い出してしまう先生と、授業時間内はずーっと一緒にいられるとなれば…」

 「答えは決まってるじゃないか。僕もジェームズもピーターもみんな、占い学を選択したよ?シリウスだけ数占い学にする?」

 にっこり微笑んだリーマスに、シリウスはため息をついた。
 そして、手にしていた選択授業リストの占い学のところに、やや躊躇いながらチェックをつけた。

 「でもさ、俺たちずーっと追い出されてて…ここ最近北塔には足を踏み入れてないじゃないか」

 「それは、作戦のうちだって行っただろう?押してだめなら引いてみろってね」

 グリフィンドールの談話室に、シリウスの妙なため息が聞こえていた。

 「いいかい、シリウス。確かに僕らは悪戯をしすぎて北塔に足を踏み入れることを禁止されてしまったけれども、占い学を選択すれば、授業なんだから、入室禁止とは言われないはずさ」

 「ほら、僕たちって、悪戯をするたびに北塔に逃げ込んでいたでしょ?それを2年間も超えて続けていたら、あの温和な先生だって参ってしまったんだと思うんだ。だから、ジェームズが押してだめなら引いてみろ作戦!を考案したんじゃなかったっけ?」

 「そんなに深く考えなくて大丈夫だと思うよ」

 みんなにっこりと笑っている。
 シリウスはもう一度深いため息をついた。

 「お前らって、どーしてそんなに前向きなんだっ?!」

 「そりゃ、愛しいリリーと先生のためならばっ!」

 と。
 かつかつという足音が聞こえてくる。

 どばちんっ

 次の瞬間には大きな音とともに、今までシリウスの前で瞳をきらきらと輝かせ熱弁していたジェームズが、どこかへ飛んでいった。

 「私は、貴方のものじゃなくてよ。気安く愛しいとか言わないでちょうだい、ジェームズっ!」

 「あー、愛しいリリー。今日の君の怒った顔はいつもより百倍ぷりちーだよっ」

 「うっとおしいわね。近づかないで頂戴、ジェームズ」

 「…リリーと先生…どっちも手に入れようとするからそうなるんだよ、ジェームズ」

 と、ボソッとリーマスがつぶやいたことは、シリウスしか知らないだろう。


 ともかく新学期には三年生になるいたずらっ子たち。
 全員が占い学を選択し、そして教員へどんなプレゼントをしようかと考えているところであった。






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 さん、出てこない(爆)
 でも、選択授業を選ぶときには、シリウスが一番悩んだと思う。。。