三年生


 …変わることのない新学期が始まったわ。

 夏休みの間過ごした家では、ほんの数日だけ彼に会えたけれど…
 忙しくて、最近では知名度も上がってきた彼のこと。
 同じ場所に長くとどまるのは良くない、とすぐに私の元を去って行ってしまった。

 寂しいのかしら。
 寂しいのかもしれないわね。

 己の考えに苦笑しながら、私は今年も北塔で授業を教えることになる。
 …変わったことといえば……
 悪戯っ子たちが、最近は私に興味を失ったのかまったく手を出してこなくなったことね。
 あとは……もルデも、静かに息を引き取った。
 ナッシュだけが私の元でくつろいでいるようになったわ。


 最初の授業は三年生。
 新しく占い学を取る生徒たちね。
 一体誰がいるのかしら。

 扉を開けて教室に入る。
 テーブルにつくこともせず、部屋の中をものめずらしげに眺めている生徒たちの姿が目に入る。

 「占い学の時間へようこそ。まずはおかけになってくださいな」

 おずおずと席に着く生徒たちに、私はゆったりとした笑みを向ける。
 ほんの少し気になる四人の生徒がいたけれど、普段どおり授業を進めることにした。

 「占いは、己の内なる言葉に耳を傾ける学問のこと。教科書はどうぞかばんの中にでもおしまいになってくださいませ」

 毎回言う、最初のひと言。
 彼らは戸惑いつつも私の言葉通り教科書をかばんの中にしまい始める。
 さて、この子たちの中にどんな力を持った子がいるのかしらね。























 先生が現れた。
 北塔の中に入ったら、いつもとは違う雰囲気で驚いた。
 授業をするっていうのはこういうことなのか…と、僕らは妙に納得してしまったんだっけ。

 「占い学の時間へようこそ。まずはおかけになってくださいな」

 先生のひと言で、みんながきっちり寮別に分かれて席に着く。
 勿論僕ら四人は、真ん中の一番前の丸いテーブルにどっかりと座り込んで先生の次の言葉を待つ。
 僕らの隣のテーブルには、きゃいきゃいと占い学に興味を持った愛しいリリーが座っていたからもうたまらないね。
 僕とリリーは未来が決めた最愛のカップルなんだよっ!

 「教科書をしまってくださいな。そして…そうね、最初の授業で扱うのは、とっても面白いものよ」

 魔法の力をちりばめた石を三つずつ生徒に渡した先生。
 これから何をするんだろう?
 僕らの教科書をしまえといった。
 占い学っていうのは、よくわからないな。

 「何をするんですか?」

 「とっても素敵なことよ。まずは占いについて簡単に説明をしましょう」

 目をとじてごらんなさい、と先生は言った。
 全員が恐る恐る目を閉じた。

 「先ほどの石を手にとって。…一つでよろしいわ。目をつぶって、気に入った石を選んで御覧なさい?」

 宙に浮いた3つの石。
 こんな石でどんな占いが出来るというのだろう。
 そんな風に想いながらも、僕は石を一つ取った。

 「目を開いて…?」

 「きゃぁっ!」

 すぐ隣からリリーの声。
 僕は急いで目を開いて、リリーのほうを向いたよっ。
 なんたって、愛しいリリーに何かあったら大変だからねっ!

 「…見えたでしょう?」

 「先生、何ですか、これ?」

 「さあ、何でしょうね。それは誰かの未来かもしれないし、過去かもしれないわ」

 先生は笑顔だった。

 「占い学での一番の基本。自分のことは占うことが出来ない。これだけは覚えておいてね。今手元にある石には、私が魔法をかけてあなた方を司っている星の力をとどめてみたの。私の占いを信じて、ちゃんと目を閉じて石を選んだ人には…手の中にある石に、何かが映っているはずよ。それが、誰の運命なのかは…お教えしませんがね」

 すごい、ということしか出来なかった。
 1年生のときに先生を見かけたときは…
 僕らは、ただ単に綺麗でどこか謎な先生だとばかり思っていた。
 僕は占い学については、先生の授業を受けてみたい、北塔に入りたい、という想いだけでやってきたけれど…これほどまでに神秘的なことがこの世にあることが信じられなかった。
 いくら悪戯を試みても失敗したわけだ。
 僕は一人失笑した。

 占い学の授業はこれから面白くなりそうだ、と思って隣を見ると、ニコニコ笑顔のリーマスと、おどおどしているピーター。それに、何度もため息をつくシリウスの姿が見えた。






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 こんな授業はいかがでしょう?
 私は、神秘的なさんが大好きです。
 リドルに甘えるさんも可愛いのですが(笑)