散歩道
ヴォルデモート卿と過ごす初めての夏がやってきた。
ぎらぎらと照りつける太陽。
ヴォルデモートと違って、俺達は寒さに耐えられるように洋服の変わりにふさふさとした体毛を持っている。
だから、夏は暑くてあまり好きになれない季節だ。
その、暑い夏になったら、ヴォルデモート卿はまた、という女性の住む屋敷に出向いた。
前回で向いたときは明け方になるまでの短い間の滞在だったけれど、今度はかなり長い間この場所にとどまるらしい。
「久しぶりね、ヴォル」
「会いたかったよ、」
「私もよ。窮屈なホグワーツの生活に飽き飽きしていた頃だったから」
屋敷に着くといつもどおりが俺達を出迎えてくれる。
普段脱がないはずのローブを脱いでスタンドにかけると、ヴォルデモートは宇宙空間のような屋敷の奥の部屋へと足を運ぶ。
てけてけと、俺もついていく。
「は、少し大きくなったみたいね。歩く姿が凛々しくなったわ」
くすくすとの笑い声が後ろから聞こえてくる。
ヴォルデモートは、奥の部屋のふかふかしたソファに腰掛けると、髪をかきあげながら俺を見た。
「…僕と居ると退屈しないから、じゃないかな」
「あら、そうなの?」
「少なくとも、僕と出会う前の生活よりはとても充実しているはずさ」
ヴォルデモート卿にしては珍しく口元を緩めながらそんなことを言う。
がヴォルデモート卿の隣に座る。
俺が、ヴォルデモートの隣に飛び乗ると、彼は俺をのひざの上に乗せた。
は、優しく俺の鬣を撫でてくれる。
「…ねえ、ヴォル」
「なんだい?」
「散歩に行かない?」
「…もう夜遅いけれど」
「だから、よ。今日は…ちょっと不思議なものが見られる日なの。きっとも喜ぶわ」
は意味ありげな言葉をつぶやく。
そして、笑顔をヴォルデモートに向ける。
こんな綺麗な笑顔を向けられて、ヴォルデモートがNOと答えるはずがない。
のそり、とのひざの上から飛び降りると、俺は尻尾をピン、と立てて嬉しさを表現する。
その姿を見て、がくすくすと声を立てて笑う。
「仕方ないな。夏とはいえ夜は冷たい風が吹くよ。風邪を引かないように準備してくれるなら、散歩に付き合ってもいいかな」
「ありがとう。支度してくるわ」
やれやれ、といいながらも、ヴォルデモートの表情は優しい。
きっと嫌がっているわけじゃないんだ、と俺は思う。
それにしても、今散歩に行くと何が見えるというんだろう。
少し待つと、ヴォルデモートと同じような黒いローブをまとったが現れた。
満足そうにヴォルデモートが頷いて、先ほどスタンドにかけたローブを自分もまとうと、入り口の扉を開けた。
そのとたん、少し冷たい風が俺の肌を撫でた。
「…良い風ね」
「昼間は暑くてね。夏とはいえ、あんなに暑いのは好まないよ」
「そうね。今年の夏はなんだか暑いわね。…でも、こんなに晴れていれば、すばらしいものが見えるわ」
は慣れた様子で、丘の上をどこかへ向かって歩いていく。
の隣にヴォルデモートが並ぶ。
その少し後ろを俺がとことことついていく。
「ここ、私の散歩道なの。この先に…素敵な場所があるのよ」
「…なんだかひどく嬉しそうだね」
「…だって、貴方とこの散歩道を歩けるなんて思っても見なかったんですもの」
「そう…」
満天の星空だった。
なんだか神秘的な空気が漂っていた。
「、おいで」
ヴォルデモートが、立ち止まっていた俺の名前を呼んだ。
もう少しで置いていかれてしまうところだった。
なんだか綺麗な小道だった。
「この道、星が一番良く見える道なの」
「君らしいね」
もしかして、とヴォルデモートがつぶやく。
「流星群を?」
「さすがヴォル。察しがいいわね。今日は極大の日なの。きっと素敵な星空になるわ」
に見せたかったのよ、とつぶやかれ、俺の耳がぴん、とたった。
てけてけ、と走りよって、の足元に擦り寄る。
「…どうして?」
「は…まだ幼いから、星の力を余すことなく吸収できる気がするの。紅獅子には不思議な力が宿っているというし、には流星群のような星が似合っていると思ったのよ」
「君がそう思うなら間違いないんだろうね」
ふふふ、と上品に微笑んだは、少し開けた場所で足を止めた。
その場に腰を下ろすと、空を眺め始める。
側によっていた俺をそのひざに乗せる。
「…あ、ほら」
が指差した空を見上げると、無数の星が空から降ってくるように流れていた。
それは、不思議な不思議な感覚だった。
なんだか、空にじっとしていて動かずに居る星とは違って…
なんだか、力にあふれているような気がしたんだ。
ものすごく魅力的だった。
俺の目は、流れてくる星に釘付けになった。
「…気に食わないな」
ヴォルデモートの声が聞こえた。
それでも俺は、のひざの上で星をじっと見つめていた。
すると、その態度がよほど気に食わなかったのか、ヴォルデモートは俺をのひざの上から下ろした。
地面がつめたい、というわけではなかったけれど、のひざの上が心地よかったので、俺は少し不満だった。
「…に嫉妬しているの?」
ごろん、と星を見ながらヴォルデモートがのひざを枕に寝転び始める。
俺は、の横でひたすら星を眺めている。
一体どれだけの星が流れたというのだろう。
星の流れは一向に止まる気がしない。
「……いいね、この景色」
「素敵よね」
流れる星は、神秘的だ。
なんだか俺の体に変化があったような気がするが、見た目は変わっていない。
それでも、星から何かエネルギーを受け取った気がする。
一緒に星を眺めている、とヴォルデモートの姿が、流れる星以上に神秘的だった。
これが俺の主人たちなのか、と思うと、なんだか不思議な気持ちになった夜だった。
「…散歩道なの」
「……夜中に抜け出して、星を見に来る散歩道、だろう?」
「何もかもお見通しかしら?」
「去年、夜中に目覚めたら君がどこにも居なくて慌てたことがあった」
「あら」
「…でももういいよ。今度、君がどこにも居ないときはここまで散歩をしてくるよ」
「そのときは、も連れてきてあげてね。この場所が気に入っているみたいだから」
の優しい声がこだましていた。
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タイトルに合ってない気がするけど、気にしない(笑)